多彩な遊びに浸り家族愛をたっぷり受け取る日ー韓国の秋夕の歴史と今(2)

秋夕(チュソク)は、韓国人にとって一年の中で最も重要で意味深い祝日であり、豊作と豊かさの象徴です。

「祖先を供養する大切な日ー韓国の秋夕の歴史と今(1)」では、秋夕の伝統行事や家族の集まり、祖先供養、食文化が紹介しました。今回は、現代における変化や新しい形態に迫ります。伝統を大切にしながら、現代のライフスタイルに合わせた秋夕の楽しみ方をご紹介します。ぜひご覧ください。

現代の秋夕の過ごし方

現代では、複雑な盛り付けが省略され、ほとんどの家庭が以下のような祭礼を行っています。

祭礼の供物を整えた後、祖先に香を焚き、酒を注ぎます。この時、女性は酒を注がず、男性だけが祖先に酒を注ぎ、2回お辞儀をします。そして、祖先が美味しい料理を召し上がるのを待ちます。この時間が過ぎると、家族が一緒に祖先と食事を分かち合う時間を持ちます。この時に初めて、家族全員が故人と共に祝うことができるのです。

秋夕の食事が本格的に始まると、家の中で最年長者が年下の者たちにお祝いの言葉を述べ、一年間の労をねぎらいます。そして、子孫たちの健康と幸せを祈ります。それに対し、子孫たちも年長者の健康と長寿を祝福し、子どもたちは親にお小遣いを渡すこともあります。

親戚や隣人の家に挨拶回り

食事が終わると、家族は近しい親戚や隣人の家に挨拶に回ります。この時、各家庭では客を迎える準備に忙しくなります。男性が訪れると簡単な酒席が用意され、一緒に一杯飲みながら職場での出来事や社会問題について話し、日常から離れて余暇を楽しみます。一方、女性たちは久しぶりに会った親戚や故郷の友人たちとお茶を飲みながら、溜まったストレスをおしゃべりで発散し、楽しい話の中で笑い合い、久しぶりに子どもの頃の世界に戻ります。

夕食後の過ごし方ー伝統的な遊び

夕食の時間になると、全家族が集まって幸せな時間を過ごします。この瞬間のために、親たちは故郷で、子どもたちはそれぞれの職場で、孫たちは各自の場所で働き、勉強しながら、互いを思い合い過ごしてきます。

子どもたちは、楽しい伝統遊びを始めます。年長者は子どもたちを連れて、民族の遊びであるユンノリ(韓国の伝統的なボードゲーム)をしながら、最近のゲームに夢中になっている孫たちに伝統的な遊びを教え、その伝統を引き継ぎます。また、孫娘たちは髪を編み上げ、美しい韓服を着て、兜をかぶったり、ジェギチャギ(蹴り上げたお手玉)をしたりしながら、都市で楽しめなかった伝統遊びに没頭します。秋夕の楽しさは故郷での癒しであり、伝統料理を存分に味わい、伝統遊びを思い切り楽しみ、先祖を敬う行事でもあり、まさに民族の祭りと言えます。

秋夕の日だけは、すべての疲れを置き去りにして、家族の温もりに包まれ、親子や兄弟姉妹、そして次世代までみんなで笑い楽しみ、喜びを分かち合います。

秋夕は「大望月」とも呼ばれ、月を見ながら願い事をすれば叶うという言い伝えがあります。家族は夕食後に集まり、お菓子を並べてお茶を飲みながら月が昇るのを待ちます。今年も豊かで健康な一年になるようにと、満月に祈ります。すべての人の祈りを、満月が叶えてくれると信じています。

秋夕ならではの多様なイベント

秋夕にはさまざまなイベントが行われ、遊びが繰り広げられます。牛の闘い、布を織る競技、カンカンスルレ、月見などが行われます。農楽を楽しむ一方で、村人たちがチームを組んだり、他の村と綱引きをしたりします。芝生や砂浜では相撲が行われ、勝った人は「壮士」として、子牛や米、綿布などをもらいます。現在では地域ごとに「天下壮士相撲大会」が開催され、地域で選抜された選手は「全国天下壮士相撲大会」に出場し、1位になると天下壮士に選ばれます。最近はさまざまなテレビ番組で芸能人やスポーツ選手のパフォーマンスを見る機会が増え、視聴選択が可能な時代になりましたが、20年前までは連休中に国民が楽しめるスリリングなエンターテインメントは「天下壮士相撲大会」でした。同大会で1位になったスターといえばカン・ホドンです。国民に愛され、バラエティ番組で活躍し、日本でも知られています。

全羅南道の西海岸地方では、秋夕の日に月が昇る頃、女性たちが空き地に集まりカンカンスルレを踊り、鶏の戦いや牛の闘いも楽しんでいたと言われています。

帰省する際には親の愛情たっぷりのギフトをもらえる

休日が終わると、子どもたちは再び自分の生活の場へ戻る時間となります。休暇を楽しむために、親に贈り物を持って帰省した子どもたちですが、帰る際には親からギフトが贈られます。働き続けて十分に食事を摂れなかった子どもたちのために、韓国の代表的なおかずであるカルビチムやプルコギなどの名節料理、田舎で採れた様々な野菜やお米、トウモロコシ、サツマイモ、ジャガイモなどが満載の車に詰め込まれ、親の心が詰まった贈り物が送られます。子どもたちは、親の思いがこもった豊かな食卓をもって、自分の場所へ戻ることになります。

まとめ

こうしてまた一年が過ぎ、もう一つの秋夕(チュソク)が過ぎ去ります。韓国人にとっての秋夕は、親子や兄弟姉妹、近隣の人々との出会いを持つ民族の和合であり、故郷への民族的大移動でもあります。また、「孝(効)」を基盤とした民族精神が生き続けている現れでもあり、孝を基盤とした社会的な絆でもあります。

現代の社会では一部の伝統が失われつつありますが、今日の秋夕は民族精神である孝の根幹がいまなお生き生きと息づいている証でもあり、私たちの文化に深く刻まれた伝統です。そして、現代と伝統が共存しながら発展する幸せな祭りでもあります。毎年秋夕が巡ってくると、故郷や両親を思い起こすこの姿こそが、まさに韓国の情緒であり、韓国の秋夕なのです

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■ライタープロフィール
名前:姜春姫(きょう・しゅんき)女性
「医・職・住」ラボでは、グローバルな視点で、日本と中国との高齢者が直面する医・職・住の問題を提起し、特に日本に住んでいる外国人の問題を提起する。
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