秋夕(チュソク)は、韓国人にとって一年の中で最も重要で意味深い祝日であり、豊作と豊かさの象徴です。秋夕の本来の意味には、秋の到来を喜び楽しみ、収穫の季節がもたらす幸せを祝う意味も含まれています。秋夕の行事がいつ始まったかは正確にはわかっていませんが、三国時代からではないかと推測されています。それでも、秋夕は長い歴史の中で韓国人の最大の行事・祝日としての地位を確立し、今日までその伝統が続いています。
旧暦8月15日の秋夕(チュソク)は3日間にわたる国家指定の祝日
現在の韓国では、旧暦の8月15日を秋夕(チュソク)当日とし、その前後3日間が国家指定の祝日とされています。
つまり、毎年旧暦8月14日から16日までの3日間が法定休日となり、通常の休日が含まれる場合は代替休日になります。秋夕になると、民族の祝日であることから多くの韓国人が美しい韓服を着て、新米を使ってソンピョン(韓国の伝統的な餅)を作ります。これは、一年の農作業の収穫を感謝し、先祖供養を行うためです。
また、近隣の人々と手作りの料理を分け合ったり、挨拶や良い言葉を交わしたりしながら、親や兄弟、家族に会うために故郷へ向かいます。最近では、帰省する人々のため、政府が3日間にわたり高速道路の通行料を無料にすることもあります。親族が故郷に集まり、先祖供養の儀式や墓参りを行う伝統が続いており、毎年秋夕が来ると国民の約75%が故郷を訪れます。
秋夕は最も大切な行事の一つで、祖先を供養する日
秋夕は韓国人にとって祖先を供養するという最も大切な行事の一つです。この日、ソウルのような都市に住む子どもたちは、親孝行の気持ちを込めて大小の贈り物を持ち、子どもたちを連れて田舎に住む両親のもとへ向かいます。家族が集まるという意味も大きいですが、祖先を供養し、家庭の平安と繁栄を願うという重要な意味が込められています。
祖先を供養するこの習慣は、「孝(こう)」を根幹としています。韓国の歴史に深く根付く儒教の基本精神が今も続いているためです。
秋夕における家礼の意義と多様性
家礼を執り行う方法は、朝鮮時代には非常に複雑で、手順も厳格で真心が求められるものでした。そのため、「一年中祭祀を行い、宗家の嫁は家礼のために一生を費やす」というほど、数々の家礼に全力を尽くしたと言えます。しかし現在では、女性が家庭の大小の行事にかかる負担が大きすぎるとの理由で、多くの部分が省略され、伝統的に守られていないこともあります。それでも、秋夕(チュソク)や正月などの民族的な祝日には、多くの家庭で家族が集まり、祭礼を執り行っています。
秋夕に行う祭礼は家礼(かれい)、つまり各家庭で行う「茶礼」として、家ごとの家礼(かかれい)とも呼ばれています。家ごとに祖先へ捧げる祭礼で、基本的には儒教の方式に基づいていますが、地域や家庭によってその方法や形式、供える料理も異なります。
家礼の供物
家礼の供物には、基本的にご飯とスープが供えられ、調理された肉料理として鶏肉一羽を置くのが一般的です。家庭によっては茹でた豚肉を供えることもあり、韓国人に人気のあるカルビチム(煮込みカルビ)やプルコギ(焼き肉)を出す家庭もあります。海産物としてはタコを串に巻いて蒸したタコの巻き物、チョギ(イシモチ)やピョンオ(ヒラメ)などの魚を蒸し、飾りを添えた魚料理が並びます。また、3種類のナムルが用意され、白色にはトラジ(桔梗)和え、緑色にはホウレンソウ和え、山菜としてゴサリ(ゼンマイ)和えが供えられます。
【松餅(ソンソッ)】
秋夕(チュソク)は秋の収穫を意味するため、新米で作った餅、特に松餅を供えます。最近では、松餅も白だけでなく、青やピンクなどの色とりどりの松餅を美しく作り、祭礼の供物として並べることが一般的です。
この時、欠かせないのが果物です。祭礼に供える果物としてはリンゴと梨が必須であり、リンゴは一番大きく、色が美しいものを選びます。梨も一番大きくて丸く、黄色に色づいた最上の梨でなければなりません。そのため、秋夕が近づくと果樹園は年間最高の売上を記録し、質の良いリンゴと梨が出荷されます。故郷に向かう人々も、それぞれ果物の箱を手に持って帰省する光景が繰り返されます。
そのほかにも必ず供えるのが、剥いた栗や秋に収穫されるカボチャや干し柿です。祭礼の供物の順番や盛り付けも重要で、壇上に必要な祭器(祭りに使う器)には、木製の茶色の祭器に食べ物を盛り付けます。順番としては、最前方にご飯とスープを置き、その次に肉類や魚類、次にナムルや副菜を並べ、最前方には果物を置きます。
果物を置く際には「紅東白西」の原則に従い、赤いもの(花柿やリンゴなど)は東側に、白いもの(栗や梨など)は西側に置かれることになります。
次の記事で、現代のライフスタイルについてさらに掘り下げていきます。どうぞご期待ください。