大久保で外国人共生とまちづくり活動に尽力、「まち居住研究会」の32年の軌跡

2024年5月17日に新大久保の一角でまち居住研究会(以下、まち研)による「まち研、区切りの会」が開催されました。

まち研は、1992年に設立されて以来32年にわたり大久保地域の変遷を外国人との共生を含めて研究してきました。大久保の発展にはまち研の貢献が欠かせません。

しかし、メンバーの高齢化や逝去があり、まち研も一区切りをつける話が出ました。そこで筆者もこの貴重な集まりに出席しました。まち研の活動を少し振り返ってみたいと思います。ぜひご覧ください。

日本人と外国人の関係構築とまちづくりを目指す「まち居住研究会」

まち研は、日本人と外国人が地域住民としてより良い関係を築きながら暮らすためのまちづくりを考えるグループです。まち研は、「住宅」「居住」「コミュニティ」の視点から地域活動や調査研究を行っています。

外国人が急増し始めた1980年代後半、彼らがどのような住宅に住み、どんな住宅問題を抱えているのかという疑問から、1990年に建築やまちづくりに関わる仲間が集まり、外国人居住に関する調査研究を開始しました。

その後、有志が1992年にまち研を発足し、外国人の住宅問題やコミュニティに関する取材・情報発信、調査研究活動を継続して行いました。

また、1998年から2000年の2年間は、外国人が多く暮らす東京都新宿区大久保地域で、不動産会社の方やマンション管理の専門家、マンション管理組合役員、地域活動グループの方、研究者、留学生などが加わり、「国際化に向けた共住のためのルール・システムづくり」というテーマで地域活動に取り組みました。

「まち居住研究会」の主な活動内容

まち研は、日本において都市計画や地域再生に関する研究を行う団体のとして、まちづくりや居住環境の向上を目指し、学術研究や実践活動を通じてさまざまな提案や政策の提言を行っています。

主な活動内容は以下のとおりです。

  1. 調査研究: 都市や地域の現状を調査し、居住環境やコミュニティの課題を分析します。
  2. 政策提言: 調査結果をもとに、地方自治体や国に対して具体的な政策や施策の提言を行います。
  3. 教育・啓発活動: シンポジウムやセミナーを開催し、まちづくりに関する知識や情報を広めます。
  4. 実践プロジェクト: 地域住民と協力して具体的なまちづくりプロジェクトを実施します。

都市計画や建築、社会学など多岐にわたる専門家が集まり、学際的なアプローチで問題解決に取り組み、地域の活性化や住民の生活質向上や持続可能な都市づくりを目指す重要な役割を果たしています。

まち研の設立当初はメンバーの年齢層は20代から70代までと幅広く、マンション管理の専門家、不動産会社の人、留学生、研究者、都市プランナー、マンション管理組合役員など多彩な顔ぶれでした。それぞれの知見はまち研の知見となり、今もなおそれらを継承して活動を展開しています。

「まち居住研究会」の軌跡

大久保で外国人居住調査に取り組む

1990年に、建築やまちづくりに携わる仲間が新宿区大久保で外国人の住宅問題の実態調査を開始しました。外国人が部屋探しで苦労し、不動産業者や家主が言葉の壁で困っていることを知り、1992年にまち研が正式に誕生しました。

小冊子『住宅時事往来―外国人の居住問題を考える―』は1999年まで発行していました。すべての内容をまとめ、単行本『外国人居住と変貌する町』を発行しました。

1998年に大久保で勉強会を立ち上げ、日本人と外国人が共に暮らすためのルールやシステムづくりに取り組みました。多様な人々が参加し、研究会の活動が広がったのです。その成果として、2000年に『きょうから大久保』というガイドブックを作成・発行しました。

研究会での活動を糧にして、調査から実践へ

外国人居住の課題や調査対象としていた大久保の街は大きく変化したため、2004年春から地域活動に一区切りをつけました。その後は次の展開として、メンバーは研究会での経験を活かしそれぞれ実践的な取り組みを行うようになりました。研究会は情報交換の場として機能し、必要に応じて再び集結して活動する方針を採りました。

メンバーの活動を紹介

金沢祐吉氏:大久保の街の変化を撮影し、ブログで定点観察を行う。2008年5月に大久保地域センターで開催された写真展「大久保風景の今昔」は、金沢氏をはじめ山本重幸氏、小口優子氏が中心となり、地元の方々から大好評を集めた。

荻野政男氏:不動産業者として、外国人と日本人が共に生活するシェアハウス「コミュニティハウス」を展開。メディアの注目を集める。また、稲葉佳子氏と国土交通省や業界団体による居住支援制度の策定にも参画している。

稲葉佳子氏:「かながわ外国人サポートセンター」に関わり、石井由香氏、五十嵐敦子氏、笠原秀樹氏、福本佳世氏、渡戸一郎氏などの研究者やまちづくりプランナーとともに、公営住宅や都市再生機構(UR)の外国人居住調査に取り組む。

太田多佳子氏、姜春姫氏と参加した大泉のブラジル人コミュニティや西葛西のインド人コミュニティで住宅取材調査を行い、2008年に(公財)日本賃貸住宅管理協会から『在日ブラジル人・インド人の住宅事情』(編集・デザイン:宮本幹江氏)が発行された。

まとめ

「まち居住研究会」は、冊子づくりなどの活動に尽力し、ゆるやかなネットワークを大切にしてきました。活動は一旦区切りをつけますが、新たに必要とされる場へ赴くことでしょう。街が変わっても、変わらないものは残ります。

まち研の皆さん、長年の活動お疲れ様でした。どうぞ元気で大久保を見守ってください。今後、メンバーへの個別インタビューも予定していますので、どうぞご期待ください。

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■ライタープロフィール
名前:姜春姫(きょう・しゅんき)女性
「医・職・住」ラボでは、グローバルな視点で、日本と中国との高齢者が直面する医・職・住の問題を提起し、特に日本に住んでいる外国人の問題を提起する。
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