辰年に池上先生と龍の足跡をたどるー「龍の世界」池上正治先生の講演会(前編)

 

2024年1月17日に池上正治先生による「龍の世界」の講演はが国際善隣協会会議室で行われました。2月8日には、虎ノ門の中国文化センターでも同様のテーマで行われました。

2024年は辰年であり、龍の年です。龍は私たちの生活のさまざまな側面に意識的であろうとなかろうと浸透しています。龍を尊ぶ精神は、東アジアの中国や韓国(朝鮮)、日本だけでなく、東南アジアのベトナムやタイにもあります。

では、龍とは一体どのような存在なのでしょうか? 筆者は池上先生の講演に興味を持ち、この度講演に出席しました。先生は龍の誕生から現在までの変遷を、多数のスライドを用いて語ってくださいました。今回は講義での学びをご紹介します(報告書形式)。

池上正治先生( いけがみ・しょうじ)略歴ご紹介

【略歴】
池上正治氏( いけがみ・しょうじ)
1946年(新潟県)生まれ、
東京外国語大学中国科卒業。
作家・翻訳家。
著書に、『龍の世界』(2023)
『気の不思議』(1991)など、
訳書に、『中国養生術の神秘』(1999)など、
著訳書の総計70余冊。

辰(龍)年は、12年に1回訪れる

12年に1度の辰(龍)年がやってきました。その龍を感じ、龍を形作り、龍を語り、龍を生活のリズムに組み込んできたのは、中国人です。

歴とは、太陽や月の観測に基づき、時間の周期性(日・月・年)を明確化したものです。古代文明を築いた民族は、それぞれ独自の歴を作成しました。中国歴の最大の特徴は、陰陽と五行を統合した点にあります。具体的には、10の干(幹)と12の支(枝)を組み合わせ、その最小公倍数である60を1周とし、過去および未来に無限に遡及できるようにしています。

龍はどのように考えられていたのか

孔子が「龍のような人間」として賞賛したのは、老子でした。儒教と老荘の間には、『論語』と『老子』という中国思想の対立が存在しています。また、楚の憂国詩人である屈原の作品『離騒』には、頻繁に龍が登場します。龍は時として権力者の象徴として描かれ、龍頭や龍袍などの表現が用いられるようになりました。また、皇帝の昇天は龍に乗って行われると信じられていました。夏朝の始祖とされる禹は、治水に成功し、龍に乗ったと言われています。また、伏羲と女媧という人祖の関係についても龍が関連しています。さらに、龍と鳳は中国文化において2大トーテムとされることもあります。龍の実在性に関する諸説もいくつかあります。

龍はどのようにして形作られたのか

龍の起源は龍骨の模様から始まり、殷墟(いんきょ)の大発見につながりました。甲骨文字に見られる龍の変遷やその後の展開も興味深いです。中国の四川省自貢(じこう)は「恐竜の里」として知られています。中国の各地には祭器からアクセサリーまで、玉で作られた龍の作品が見られます。また、陶器や青銅器にも龍のデザインが見られます。『説文解字』(せつもんかいじ)には、龍についての解説があります。王符による「九似説」は龍のイメージを完成させました。また、龍の九匹の子供とその役割、そして龍王が雨を管理するという伝承もあります。

龍は自然界にどのように潜んでいるのか

大自然の中で超越した存在を見出すこと、それが「龍の発見」なのかもしれません。その龍に匹敵する規模の構造物として知られるのが、万里の長城です。また、地名に「龍門」がある場所も興味深いです。龍宮が実在するかどうかは疑問ですが、不死とは、老子の系譜にある神仙思想の一部であり、人間の願望を投影したものと考えられます。

また、龍井(ロンチン)は中国屈指の名水であり、その一帯は銘茶の産地でもあります。地の気が流通するルートである龍脈や、地の気が湧き出る龍穴(りゅうけつ)を探索することで、龍の存在を感じることができるかもしれません。

これらの存在はしばしば水や土地の守護神として崇拝され、龍と同様に神秘的な力を持つとされています。

中南米には、ククルカンと呼ばれる羽毛の蛇が伝説に登場します。ククルカンもまた、豊穣や天候の管理などの神秘的な力を持ち、龍と同様に崇拝されています。

欧州には、ドラゴンやワイバーンと呼ばれる伝説上の生物が存在します。ドラゴンはしばしば恐ろしい姿で描かれ、騎士や英雄との戦いの対象であり、敗北する存在として物語に登場します。しかし、ワイバーンは有力な守り神として描かれ、橋のたもとなどに像があります・

これらの存在は、文化や地域によって異なる特徴を持ちながらも、龍と同様に神秘的な力や象徴的な意味を持っており、人々の想像力を刺激し続けています。

おわりに

龍は、世界各地の文化において類似する存在が多数あります。また、龍は神秘的な力を持つとされています。中国最古の龍の造形は約6,000年前、新石器時代の玉製の龍であろうと言われています。その後、龍のイメージは多様化の一途をたどり、皇宮から庶民の家まで、龍のイメージは存在します。龍には、幸運や豊作を叶える神格化されたイメージがあり、人々は龍に向けて祈願しますが、その一方で時には「暴れ龍」にもなります。

龍の存在は芸術や文化にも大きな影響を与えており、絵画や彫刻などの表現に頻繁に登場します。さらに、龍は風水や建築、さまざまな伝統的な祭りや儀式にも登場します。龍の国と、その龍を伝える人たちを、これからも観察していきたいと思いました。

【一部の写真は李振渓氏提供】

次回の後編もご期待ください。

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■ライタープロフィール
名前:姜春姫(きょう・しゅんき)女性
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