佃エリアは(中央区月島駅より徒歩3分)、江戸初期の風景と伝統が色濃く残り、徳川家康公との深い縁を持つ場所です。この地域は、江戸時代の雰囲気を体験するには最適で、佃煮の発祥地としても知られています。
今回は、江戸時代から続く伝統的な味わいを守り続ける「元祖佃煮天安」の女店主にお話を伺いました。
徳川家康公と「佃島」の由来ー本能寺の変で家康公の堺脱出を助けたのは摂津国佃村の漁師達だった
徳川家康公は「佃島」の由来と深い縁があります。1582年、明智光秀が本能寺で織田信長を襲った際、家康公はわずかな手勢で堺に滞在していました。光秀の襲撃を受けた家康は、急いで三河への脱出を試みましたが、逆方向に大阪や兵庫の海辺へと急ぎました。
神崎川に到達した時、船が不足していた家康公の一行に、摂津国佃村(現在の大阪市西淀川区佃町)の漁民が素早く手持ちの漁船を提供しました。この献身的な協力が家康公にとって忘れられないものとなり、以降、家康公と佃村の漁民との繋がりが深まりました。
1603年、家康公が江戸幕府を開く際、佃村の漁民33人を江戸に招き、石川島に近い島を居住地として与えました。この地は、故郷の佃村に因んで「佃島」と名付けられました。
佃煮の由来ー佃煮発祥は東京の佃だった
佃村の漁民達は、この地で白魚などの漁を行いながら江戸城内の台所をまかなうことで漁業権を与えられました。しかし、離れ小島であるために時化(シケ)の際には食材が不足し、また漁期には長期保存ができる副食物が必要でした。そこで湾内で獲れる小魚類を塩辛く煮込んで保存食を作ることを考えました。
その後、千葉から醤油が伝わり、塩煮から醤油煮へと変化しました。そして、佃島で作られたこの保存食が「佃煮」と名付けられ、江戸市中に広まりました。このようにして、佃煮が誕生し、江戸時代の風物詩となりました。
元祖佃煮屋「天安」は天保8年創業~女店主にインタビュー
佃煮の発祥地である佃島に位置する「天安」は、最も古く、今年で創業186年という歴史を誇ります。天保8年(1837年)に創業された「元祖佃煮天安」の佃煮は、その元祖とされています。このたび、「天安」女性店主の方がいらっしゃる幸運な日に訪れ、佃煮を購入しながら、店内で気になることを伺ってきました。
編集部:ここの店は本当に外観から中まで、まるでタイムスリップしたような歴史を感じます。また、お店の人の温かさが感じられます。
女店主:ありがとうございます。おかげで創業から186年を迎えることができました。
編集部:おめでとうございます。少しインタビューをしてもよろしいでしょうか?
女店主:いいですよ、ただし、私の顔は写さないでください。店内は構いません。
編集部:店をここまで続けられた理由はなんでしょうか?
女店主:それは味が美味しいからでしょう。
編集部:店内にいろいろな種類の佃煮が美味しそうにいっぱい並んでますが、最初にはじめた佃煮はなんですか?
女店主:あみとエビです。
編集部:外国人も来店されてますでしょうか?
女店主:いまテレビで見ているようなツアーグループはありません。ただ、買って何も言わずに帰る方がいるので、来店したかもしれませんね。
編集部:そういえば、ヨーロッパの画家が見えてとても興味を持ってくれて、店の絵を描いてくれたと聞きました。それはとても嬉しかったでしょうね。みせてもらってもよいでしょうか?
女店主:いいですよ、その絵をくれたので壁にかけてあります。また、本の表紙にもなりました。
編集部:店に関する歴史や味の秘訣について、詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか?
女店主:佃煮を買った包みの中にありますので、それをご覧いただければと思います。
編集部:わかりました。それを見て勉強します。では、「天安」佃煮の味付けの基本はなんですか?
女店主:「天安」の佃煮は、佃煮発祥の地である佃島で創業(1837年)当時からの製法を守り、創業当時から現在まで185年受け継がれてきた「たれ」が基本です。この「たれ」は、色々な素材を煮た際に最後に残る煮汁のことです。この煮汁には185年分のさまざまな素材の味が染み込んでいます。商品は昔ながらの貝類、海藻、小魚を中心に味付けされています。
編集部:「天安」佃煮の良さは何でしょうか?
女店主:佃煮は直ぐに食べられて、保存がきき、それに栄養面でもタンパク質・カルシウム・鉄分・無機物など、身体に必要な要素が豊富に含まれています。弊店の佃煮は長持ちするため、ご遠方の方への贈り物としても安心してご利用いただけ、大変喜ばれています。また、彼方が買った生姜佃煮は夏でも2週間持ちますよ。郵送も受け付けています。
編集部:貴重な情報をありがとうございました。大変勉強になりました。またお伺いさせてください。皆さんのご健康とさらなる発展をお祈りしております。
天保8年創業で、180年間同じ場所で佃煮の製造販売を続ける店舗は、佃の歴史を象徴する存在です。
時代が変わり、人々の趣味や嗜好も変わっていく中で、この店舗はいつまでもその時代に寄り添い続けています。新たな商品を加えながら、時代と共に永遠に続けていくことでしょう。
186年以上にわたり、佃煮発祥の地である佃島にこだわり、この土地で製造と販売を続け、今後も伝統の味を守り、この土地にこだわり続ける姿勢に、感動と感謝の一言が尽きます。
次回は、佃エリアの歴史ある風情の建物や路地、住吉神社などを訪れ、江戸時代の雰囲気を体験してきたいと思います。どうぞご期待ください。
【関連記事】
・【2024年辰年を祝って】龍神様に会える!開運出世、金運上昇のご利益がある「 龍神社(住吉神社境内)」
■ライタープロフィール
名前:姜春姫(きょう・しゅんき)女性
「医・職・住」ラボでは、グローバルな視点で、日本と中国との高齢者が直面する医・職・住の問題を提起し、特に日本に住んでいる外国人の問題を提起する。
⇒より詳しくはこちら