2023年9月1日は関東大震災が起こってちょうど100年。私たちにとって重要な節目と言えます。
関東大震災は、1923年(大正12年)9月1日11時58分32秒に発生した地震で、南関東および隣接地域に大きな被害をもたらしました。
死者・行方不明者は推定で10万5,000人に上り、明治以降の日本における地震被害の中で最大規模となりました。発生時刻は食事の準備中の家庭が多く、強風や水道管の破裂なども相まって火災が発生。3日間にわたって続きました。この火災は近代日本で記録された中で最大規模です。
100年が経過した今でも当時の悲惨な状況は語り継がれています。復興の過程や取り組みから、大規模火災の発生時に身を守るための避難方法や事前準備など、多くの話があります。
今回は、中国上海の実業家であり仏教徒の慈善家としても知られる王一亭氏の救援活動についてご紹介します。
王一亭氏と関東大震災救援活動が示す日中関係
王一亭氏(おう いってい)は、中国人の実業家であり、関東大震災の際に日本で行われた救援活動に大きく貢献した人物です。彼の活動は、当時の日中関係と中国社会の状況を物語っています。
関東大震災の発生時、中日の関係は緊迫しており、排日感情が高まっていました。この背景から、震災の報道においても、最初は日本への非難や厳しいコメントが多く見られました。しかし、震災の影響が広がるにつれて、中国のメディアのトーンは変化し、被災者への支援や助け合いの声が増えていきました。
このような状況下で、王一亭氏は日本での支援活動を主導しました。彼は中国の富豪であり、関東大震災の被災者への支援のために資金を提供し、救援物資を送るなどしました。彼の支援活動は、中日の国民感情の変化を示す象徴的な出来事として注目されています。王一亭氏の行動は、被災地に対する人道的な助けと共に、中日の国民の連帯と友情を強調したものと言えます。
王一亭氏の努力は、中日の関係改善に寄与し、後に中日戦争などの出来事を経ても、中日の協力と友好の可能性を示す重要な事例となりました。王一亭氏のような個人の行動が、国際的な関係を形作る一部となることは、歴史的にも見逃せない側面です。
「王一亭氏の関東大震災救援活動は日中友好に寄与」―鎮魂の梵鐘を日本に寄贈
王一亭氏は、関東大震災によって遭難した死者を追悼し、日本に鎮魂の梵鐘を寄贈するなど、近代の日中友好を象徴する人物です。彼は多岐にわたる分野で活躍し、実業家、書画家、銀行家、政治家として知られ、中国同盟会の革命派の一員でもありました。
関東大震災が発生した際、王一亭氏は息子が東京にいたため、すぐに被災の情報を得ました。彼は迅速に救援物資を集め、18万5000元の義捐金や米 5950 包、麦 2 万包など、多くの救援物資を神戸港に送りました。これは海外から日本に送られた初の救援物資でした。
彼はまた、震災の犠牲者を回向するために中国仏教会と共に「仏教普済日災会」を設立しました。この団体は四大霊場で四十九日間にわたる法要を行い、その後に「幽冥鐘」を鋳造して日本に寄贈しました。彼は書画も多数寄贈し、さらには展覧会を開いて収益を日本に寄贈するなど、様々な形で支援を行いました。
彼の寄贈した鐘は東京震災記念堂に設置され、毎年関東大震災の発生時刻である9月1日の11時58分に鳴らされる儀式が行われました。また、彼の呼びかけによって多くの社会団体や学校が支援活動に参加し、震災への支援が広がりました。
王一亭氏の行動は、日中友好という大きなテーマの中で、個人の尽力が国際的な関係を形作る重要な要素となった事例です。その行動は、被災者への救援だけでなく、人道的な価値や友情の強さを示すものとして称賛されています。
幽冥鐘の由来
幽冥鐘は、関東大震災の遭難死者を追悼するために中国仏教徒から寄贈されたものであり、その由来について以下のような説明があります。
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この弔霊鐘は、関東大震災により遭難死した死者追悼のため、中国仏教徒の寄贈によるものである。
震災の悲惨な凶報が伝わった中国では、杭州西湖の招賢寺及び上海麦根路の玉仏寺で、それぞれ念仏法要が営まれ、中国在留の同胞に対しても参拝を促した。
また、各方面の回向が終わったのちは、「幽冥鐘一隻を鋳造して、これを日本の災区に送って長年に亘って撃撞し、この鐘声の功徳によって永らく幽都の苦を免れしめむ」と宣言した。
その後災情が日を経るに従い甚大であることが明らかになったので、仏教普済日災会の代表2名が来日し、京浜両地区の慰問を行ない、これと同時に我が国の外務大臣並びに仏教連合会に梵鐘の寄贈を申し出たものである。
その後、震災記念堂の計画確定によりこの鐘を横網町公園に安置することになった。
なお、このことについては上海の王一亭氏の特段の尽力があった。
王一亭国際文化基金会とは?
王一亭氏の曾孫である王孝方氏を中心とした日中友好の精神を伝承するために「王一亭国際文化基金会」が設立されました。
2006年に設立された王一亭国際文化基金会は、王一亭氏による日中友好の歴史を継承し、書画展やシンポジウムなどの活動を通じてその精神を広めています。特に毎年9月1日には、東京の慰霊堂で慰霊式典を行い、関東大震災の犠牲者を追悼し、日中友好の絆を確認しています。王一亭氏の遺志を継承し、日中の友情を育むために積極的な活動を展開しています。
王孝方氏は王一亭国際文化基金会の会長として、中日の友好関係を強化し、歴史的な絆を次世代に引き継ぐために努力しています。彼は「中日両国が困難な時でも共に助け合い、栄光と挫折を共有するべきである」というメッセージを掲げ、日中の友情を大切にし、その継続を支える大きな使命を担っています。
【慰霊儀式予定表】
2023年9月1日に行われる慰霊儀式の予定表は以下のとおりです。この式典は王一亭氏の日中友好の精神を称え、関東大震災の犠牲者を追悼するために行われます。
日時: 2023年9月1日 (11時~12時まで)
場所: 柬京都慰需会 横綱町公園 幽冥鐘前
所在地: 東京都墨田区横綱2丁目
交通:
・JR総武線「両国」より徒歩約14分(行程900m)
・地下鉄都営大江戸線「両国」徒歩約4分(行程250m)
・都営地下鉄「蔵前」より徒歩約15分(行程1000m)
■当日のスケジュール
11:00-11:15 受付(司会・進行:日本テレビ福澤真由美)
11:15-11:45 (1人に2-3分)
1.王孝 主催者挨拶
2.東京都慰霊協会 住吉理事長
3.参議院議員 西田先生
4.日中友好協会 永田常任理事
5.在日華僑代表 顔安先生
6.「中国救済日本義賑会」会長朱葆三の曽孫 朱全卿先生
7.王一亭国際文化基金会 王孝方会長 答礼
11:45-11:55 全員で写真撮影
11:55-12:00 打鐘(震災時刻11:58)
(2回:①家族代表 ②慰霊堂・外務省・国会議員・中国大使館)
おわりに
関東大震災への対応では、中日両国の国民は政治的な対立を超えて、お互いに援助し合う姿勢を示しました。
震災後の支援には政府だけでなく、民間団体や友好人士の協力が大きな役割を果たしました。日本は自然災害が多い国であり、多くの外国人が暮らしています。安全対策や周囲との協力が重要であり、必要な際には皆で助け合う体制を整えておくことが大切です。このような精神を大切にし、次世代に引き継いでいく意義を考えたいですね。
【参考資料】
資料写真:日本中国友好協会常務理事 永田哲二氏提供
写真:一部ネットより
近代日中企業家間における事業展開と公益活動 ―渋沢栄一と王一亭を中心に―