中国では現在、少子高齢化が急速に進んでおり、高齢者はすでに2億6000人に達し、2025年には60歳以上が3億人を超えると予測されています。いま政府や地方の各省では高齢者対策に力を入れており、今後は介護産業が急成長すると見込まれています。
それでは、前回の天津市に続いて、今回は南京市を例に挙げ、現在高齢者問題にどのように対処し、その解決に向けてどのような政策を打ち出しているのか、詳しく見ていきたいと思います。
南京の高齢者の介護現状
南京の位置は?
南京市(ナンキンシ)は、中国南東部に位置する江蘇省の省都です。 いくつもの王朝の都となった歴史があり、中国四大古都の1つとなっています。
総人口は1031.22万人で、夏はとても暑く、重慶、武漢と並ぶ中国三大ボイラー(三大火炉)の一つと言われています。市中心部の東には世界遺産の明孝陵という陵墓を始め、中山陵、孫権墓、釈迦牟尼仏頂骨舎利塔、紫金山天文台などの観光地があり、国の内外より多くの観光客が訪れます。
高齢者の90%が在宅介護を望むが、全額個人負担は重荷
まず南京市で多く見られる介護の実例をご紹介し、介護の状況を理解してもらいたいと思います。まずは南京市の紅武路街に住む老人の徐さんの例を紹介します。今年85歳で4年前から脳梗塞などいくつもの病気を抱えていましたが、昨年はまた転倒してしまい、寝たきりになり自立することができなくなりました。家族の収入は限られていたため、介護士に世話をしてもらうことはあまりできません。一人娘も働かなくてはいけないため、徐さんの世話を長く行うことはできませんでした。
日常生活は80代の奥様に頼ってきましたが、これも長く続くと高齢者には無理があり、続けられなくなりました。
現状ではこのような家庭が多くあり、介護についてもほとんど同じような状況です。
市政府は2021年7月から新介護政策を実施
2021年7月に障害者介護保険制度を導入
南京市は、重度障害がある高齢者の在宅介護問題を解決するため、2021年7月に障害者介護保険制度を導入しました。これによって、重度障害者と認定された被保険者は、専門知識のある介護士による無料在宅介護サービスを受けることができるようになりました。
在宅保険介護サービスが受けられる
南京市の紅武路街にある介護サービスセンターからの紹介によれば、最近は在宅で保険介護サービスを受けることができるようになりました。1日45元で、毎月30日までサービスを受けることができます。この政策により、高齢者の介護サービス需要は大幅に増加しました。
この新しい介護政策では、専門機関による認定を受けて条件を満たしたら、直接サービスを受けることができます。サービスを受けたい場合は、地区高齢者サービスセンターに電話をかけると、スタッフがどのようなサービスが必要かを尋ね、約15分後には介護士が老人の家に着くことができます。今のところ多くの人が受けているサービスは、入浴、おむつの交換と食事です。介護者の専門的なケアのお陰で、高齢者の体調は大幅に改善されるようになりました。
南京市の介護保険制度の構成は?
南京市が新しく実施した障害介護保険基金は、以下3つの部分から構成されています。
①政府資金
②医療保険基金
③被保険者による年間保険料の支払い
被保険者が支払う保険料は毎年20元ですが、定年退職者は保険料を支払わなくてよい。
いざ重度の障害が起きると、障害保険の効力があるため、専門介護サービスを受けることができます。 このような介護保険制度は、障害者介護の難問を解決するにあたり、とても効果的です。
2016年から中国全各都市で在宅介護の経済負担を模索
中国では2016年から多くの都市で長期介護保険制度を試験的に開始し、在宅介護の経済的負担の軽減を模索しています。
高齢化社会に突入
通常65歳以上の人口が7%に達すると、これは高齢化社会に入ったことを意味し、2倍の14%になると超高齢社会への突入とみなされています。この基準に照らすと、中国は2000年に7%、2021年に14.2%に達したため、人口の高齢化はすでに新たな段階に入っています。
長期介護保険が必要
2021年に国民健康医療委員会が発表した調査結果によると、中国の高齢者の90%以上が在宅介護を選択しており、在宅で高齢者や障害高齢者の世話をするには、大きな困難を抱えています。
その大きな悩みとは、高齢者や障害者は定期的な専門的介護を必要としますが、一部の家族にとって、このような長期にかかる費用をどう工面するかが最大の問題となっています。
各地方政府は、以上の悩みを解決するため、いま自分達が住んでいる都市の経済状況や事情にあった政策を、次々と打ち出しています。
次回もいろいろな都市の介護政策を調べてみたいと思きます。どうぞご期待ください。