日本で彫り続けて最優秀賞!篆刻(てんこく)芸術家馬景泉先生にインタビュー(1)

馬 景泉(ま けいせん)氏は19歳のときに篆刻(てんこく)と出会って以来、天職のように40年以上も篆刻芸術の道を究め、今では日本と中国で指折りの篆刻の大芸術家となりました。

篆刻(てんこく)はあまり馴染みのない言葉ですが、これは中国を起源とし、主に書画などの印章に鉄筆(刀)で、石章に刻むことをいいます。

趣味から始まった篆刻を、馬先生はどのようにこの篆刻という狭く高い道のりを歩んできたのか?そしてどのように日中両国の篆刻の文化領域で技術を高め、篆刻芸術の頂点に達したのか?

更に、馬先生は瓦材、陶土を生かした独自の新たな篆刻の道を編み出し、世間を驚かせました。
また、篆刻芸術を通して、日中両国の文化交流を活発に展開してきました。

今回はその業績と共に、その原動力はなにかを聞くため、直接インタビューをしてきました。どうぞご覧ください。

■プロフィール
名前:馬 景泉(ま けいせん)号乐得斋
1959年、中国・黒竜江省生まれ
1990年来日、中国篆刻芸術院名誉院長の韓天衡(カン・テンコウ)氏に師事。現在中国書法家協会会員、中国「篆刻」雑誌(日本)編集長、全日本華人書道協会副会長、全日本華人印社副社長、書道研究《圣笔》会参与、書道研究「白玄会」参与、日本篆刻家協会理事、楽得印社社長

篆刻(てんこく zhuànkè)とは?

中国を起源としており、広義には主に篆書を印文に彫ることから篆刻といいます。

狭義では中国で元末に起こり明代に広まった、詩・書・画・篆刻と並称される文人四芸の一つで、多く書画などの雅事に用いる印章に鉄筆(刀)で、主に蠟石ろうせき(木,竹,陶土もある)に刻する石章篆刻をいいます。

また、金属(銅・金など)を鋳造して印章を作成する場合も篆刻といいます。その鋳型に彫刻を要するからであります。書と彫刻が結合した工芸美術としての側面が強く、中国、日本を中心に篆刻愛好家が多くいます。

【家族団欒】日本移住

━━━馬先生はいつ日本に来ましたか?
馬先生:
1990年3月に日本に来ました。家内の家族全員が日本に移住していましたので、私達家族3人も日本に来ました。最初は日本語が話せず、どう生活していけばよいか戸惑いました。日本語の教育を少し受けてから、すぐにアルバイト等で生活を始めました。

━━━日本にきてからすぐ、篆刻を始めたのですか?
馬先生:日本に来たときは、すでに30歳になっていました。趣味だった篆刻を日本でも彫り続けようと思い、沢山の石材と篆刻道具、篆刻辞書も持ってきました。しかし言葉が大きな壁となった上に、溶接工等のアルバイトで体が疲れたため、思った通りの篆刻彫はできませんでした。ただ、どんなに疲れても少しづつ一日も休まずに刻み続けました。いつかきっと日本で篆刻を思いっきり彫り、皆に認められたいという一心でした。

【篆刻との出会い】

━━━篆刻はいつから習ったのですか?
馬先生:1978年頃、中国で篆刻を趣味で始めました。だんだんと夢中になり、遼寧省・錦州で有名な先生の教えを受けながら、一心に篆刻を彫り続けました。1988年に大きな転換期を迎え、上海の韓天衡(かんてんこう)先生に弟子入りを果たし、腕を上げることができました。私はそのときから篆刻芸術の道へまっすぐに進むことができました。

【中国全国第2回青年書法大会】で青年部門「銀奨」を受賞

 

━━━馬先生は篆刻界において素晴らしい経歴をお持ちですが、中国でのことをご紹介ください。
馬先生:先ほど少し触れましたが、19歳から篆刻を趣味で習い始め、仕事の合間に彫り続けました。幸運なことに友人の紹介で、上海の韓天衡(かんてんこう)先生に弟子入れを果たすことができ、篆刻芸術の腕を上げることができました。1988年には中国全国第2回青年書法大会で青年部門「銀奨」を受賞できました。その後1990年には日本に移住することになりますが、どんな状況下でも、篆刻の道は揺らぎなく歩み続けてきました。

中国全国第10回書法篆刻展で【最優秀奨】を受賞(中国篆刻界の最高賞)

━━━馬先生は中国の書法篆刻界において、篆刻界のオリンピックとも言われる作品展会で、最優秀奨を受賞されました。これで中国の篆刻界でトップの仲間入りを果たしたのですが、これについて紹介してください。
馬先生:2011年に中国第10回全国書道・篆刻展が開催されました。 この書道・篆刻展会の各セッションには50名以上の審査員がいました。 篆刻作品だけでも全国で2,200点の作品が出品され、うち72名が入選されました。最終的には14名の篆刻作家が最優秀賞を受賞されました。私の作品「岳陽楼記」は最優秀賞を受賞できました。

第35回日本篆刻展で【梅舒適賞】を受賞(日本篆刻界の最高賞)

 

━━━馬先生は日本の篆刻界で一番権威のある「梅舒適賞」を受賞されました。日本の篆刻界でトップに立った象徴だと思いますが、これについて紹介してください。


馬先生:
2019年5月開催の35回日本篆刻展に出品参加しました。運よく私の作品は「梅舒適賞」を頂けました、とても光栄に思います。

梅舒適:1914年に大阪で生まれ、2008年9月に亡くなりました。河西笛洲に師事、日展参与、読売書法会顧問、日本書芸院名誉顧問、日本篆刻家協会理事長に務めました。ほか1981年に西泠印社名譽社員、1988年に西泠印社の名誉理事、その後は名譽副社長に昇進しました。また吳昌碩藝術研究會副會長、大阪府日中友協會常任顧問等の職も務めました。日本《篆刻概說》、《隸書、篆書、篆刻》を著者、《篆美》誌の発行者でもあり、篆刻に関する多くの論文を発表しました。

馬景泉氏 受賞履歴

1990年3月:東京移住
1988年:篆刻作品が「中国全国青年書法篆刻第2回大会」青年部門で「銀奨」を受賞【中国で受賞】
1991年:篆刻作品が「西冷印社第2回全国篆刻作品展」に入選される【中国で受賞】
1998年2月:「全国第4回篆刻芸術展」に入選される【中国で受賞】
2000年9月:「西冷印社第2回国際篆刻書法作品展」に入選される【中国で受賞】
2004年9月:「西冷印社第5回篆刻芸術展」に入選される【中国で受賞】
2004年9月:西冷印社出版より「馬景泉印痕」作品集を出版される【中国で出版】
2007年9月:世界華僑「2007年中国書画芸術精品展」により優秀作品賞を受賞される【中国で受賞】
2009年6月:東京都江戸川区総合文化セターにて「馬景泉来日20周年篆刻展」を開催「馬景泉篆刻」作品集を王丹氏が編集出版する【中国で出版】
2010年9月:「遼寧省第2回篆刻展」より優秀賞を受賞及び「边款」優秀賞を受賞される【中国で受賞】
2010年6月:「龙之传人」」「大器晚成」「江山如此多娇」3部作品は中国篆刻芸術館に収蔵される【中国で収蔵】
2010年11月:「西泠印社国際篆刻選抜展及び第七回篆刻芸術展」より篆刻優秀賞と側款(そくかん)優秀賞を受賞される【中国で受賞】
2011年6月:「汇印堂印」作品は中国篆刻芸術館に収蔵される【中国で収蔵】
2011年11月:「全国第10回書法篆刻作品展」より、作品「岳揚楼記」が最優秀賞を受賞される【中国で受賞】
2013年4月:「乐得斋马景泉印迹」が出版される【中国で出版】
2014年4月:「宽仁厚德」巨大作品が韓天衡美術館に収蔵される【中国で収蔵】
2015年4月:碑刻「豆庐十論」作品は韓天衡美術館に収蔵される【中国で収蔵】
2015年8月31日:中国文化セターにて、中日文化交流促進「日本華僑華人篆刻家馬景泉来日25周年記念篆刻展」を開催【日本で開催】
2018年7月9日:六本木の国立新美術館「アート未来展」に景徳鎮で作った磁器に文字を彫った作品を出展【日本で出展】
2019年3月24日:日本第35回篆刻展にて【梅舒適奨】を受賞。日本篆刻界の最高賞【日本で受賞】

馬先生は日本に移住したものの、最初には日本語が全く通じませんでした。それではどのようにして日本で生活をして篆刻を彫り続けたのでしょうか? それから40年間どのように日本で奮闘し、また成功の裏には、どのような物語が潜められていたのでしょうか?続きは、次回の記事をご覧ください。

■ライタープロフィール
名前:姜春姫(きょう・しゅんき)女性
「医・職・住」ラボでは、グローバルな視点で、日本と中国との高齢者が直面する医・職・住の問題を提起し、特に日本に住んでいる外国人の問題を提起する。
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