前回は、太田垣 章子氏による「最期は皆おひとりさま」の講演をご紹介しました。
太田垣氏は、誰にでも必ず「死」は訪れるため「終活」を考えることは「生きる」ことを見つめ直すことだと強調し、最期まで自分の人生に責任を持つことの重要性を教えてくださいました。日本は「1億総おひとりさま」の時代に入り、認知症のリスクを認識しつつ、終活の知識を身につけることが求められています。
今回は前回に引き続き、「住まいは生きる基盤であり、最期までの住まいを考えることが大切である」とし、意思能力を失う前に準備を進める必要性について、より深く掘り下げて語られました。続きもぜひご覧ください。
「最期は皆おひとりさま」講師 太田垣 章子氏プロフィール
太田垣 章子
合同会社 あなたの隣り 代表社員
18年間の司法書士事務所経営を経て、2024年5月1日より合同会社「あなたの隣り」代表社員に就任。顧客に寄り添ったコンサルティングを目指し、独立。年間約60回、累計700回にわたり、賃貸トラブル対策を行う。また、終活に関する講演も定期的に行っている。
【経歴】
1989年 オリックス野球クラブ株式会社に入社し、3年半勤務。プロ野球選手たちの裏側での努力を目の当たりにし、成功への道を学ぶ。
2001年 司法書士試験に合格。30歳で専業主婦から離婚し、子どもを抱えながら資格取得を目指す。仕事と子育てを両立させながらの挑戦だった。
2006年 司法書士事務所で4年半勤務後、大阪で独立開業。
2011年 拠点を東京に移転。
2020年 OAG司法書士法人の代表に就任(現職)。
種類別・最期の住まいはここをチェックしよう!
その1 これが一番多い!「私は最後まで自宅(持ち家)で過ごしたい」
持ち家の場合は以下のポイントについて考えてみましょう。しっかり確認した上で、自分に適した住まいでない場合は住み替えを選択するのが良いでしょう。
- その住まいは高齢者向けの仕様になっていますか?
- 現在、その家は築何年ですか?
- 修繕費用は確認していますか?
- 2階の部屋は使っていますか?
- 介護が必要になった時、便利な間取りになっていますか?
- 2階リビングのお宅、大丈夫ですか?
- 家中の荷物は全て必要ですか?
その2 「ぎりぎりまで自宅(持ち家)にいて、家を売って賃貸で身軽に暮らしたい」
この場合、家を売却して賃貸に住むことはできるのでしょうか?
実際に不動産を売却するとして、その売却のタイミングはいつが適切でしょうか。 意思能力を失ってしまえば、売却手続きはできなくなります。また、自宅のローンはどうなっていますか。「リースバック」という選択肢はご存知でしょうか。ぎりぎりのタイミングでは、これらの手続きや対応を誰が行うのでしょうか。おそらく、ご自身での対応は難しくなるでしょう。
ぎりぎりの状況では複雑な話になるため、事前にしっかりと準備を進めておきましょう。
その3 「ずっとこのまま賃貸に住み続けたい方へ」
賃貸の場合は以下のポイントについて考えてみましょう。
- 今住んでいる賃貸物件の築何年
- 賃貸借契約が相続されることを知っているか
- 誰が賃貸契約の解約をするのか
- 自身が亡くなった後、誰が部屋を片付けてくれるのか
- 最期まで賃料を支払い続けることは可能か
特に重要なのは、部屋の明け渡しの手続きを誰が行うのかという点です。事前にしっかり考えておきましょう。
「死ぬまでの住まい」を考えるために、早めの準備を!
住まいは生きる基盤だからこそ、しっかり備える必要があります。60代で「死ぬまで住める家」を確保しましょう。
どちらにしても、今よりダウンサイズすることは必須です。広い場所に住み替えたいという人はほとんどいません。断捨離は未来のある人が行うものであり、体力が必要です。だからこそ、早めに人生の後半戦をデザインする必要があります。
「死ぬまでの住まい」を確保する際に気をつけるべきポイントは以下の通りです。
- 高齢者に優しい建物か
- 亡くなるまでその建物が耐えられるか
- 経済的に無理がないか
- 亡くなった後の手続きについて考えているか
これらの備えができていないと、人生の後半戦で惨めな結果を招いてしまうことになります。早めの準備が大切です。
忘れないで!「すべては契約で成り立つ」
契約には意思が必要です。意思を失ってしまうと、何も手続きを進められなくなります。例えば次のようなケースがあります。
70代になると、なかなか物件を貸してもらえません。その理由は、孤独死によって事故物件になってしまうリスクがあるためです。また、認知症になる可能性が高まることも影響しています。
売却の際には、意思が非常に重要です。早めに想定し、動けるうちに行動することが大切です。最も適した時期は60代です。
しかし、こうと分かっていても、自分からはなかなか動けないものです。だからこそ、周りの支援が必要です。不動産、福祉、介護、法律、行政、医療など、各専門分野との連携を持つことが大事ではないでしょうか?
まとめ
私たちの住まいは「生きる基盤」であり、60代のうちに「死ぬまで住める家」を確保することが重要です。どんな住まいを選ぶかに際しては、高齢者に優しい建物かどうか、経済的な安定性、亡くなった後の手続きなどをしっかり考える必要があります。
たとえ自宅を売却して賃貸に住み替えたい場合でも、意思があるうちに行動を起こすことが大切です。特に、70代以降は賃貸契約が難しくなる場合があるため、60代での準備が最適です。
自分一人で動くのが難しいこともありますが、不動産、介護、法律、福祉などの専門家と連携し、早めに備えることが必要です。契約には意思が不可欠であり、意思を失う前に行動しておくことが、将来の安心につながります。
【写真】一部は不動産塾ネットより
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■ライタープロフィール
名前:姜春姫(きょう・しゅんき)女性
「医・職・住」ラボでは、グローバルな視点で、日本と中国との高齢者が直面する医・職・住の問題を提起し、特に日本に住んでいる外国人の問題を提起する。
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