夏の楽しみといえば、海に行ったり、スイカやアイスを食べたり、ひまわりやクチナシなどの夏らしい自然に触れたり、花火をしたりなどがありますね。特に盛り上がるイベントが夏祭りではないでしょうか。
今年は各地でコロナ禍以降初、4年ぶりに通常開催する祭りも多く見受けられ、6月に北海道で開催された「第32回YOSAKOIソーラン祭り」では、前年比147%となる206万人を超える観客が動員されたそうです。
中国と日本は、それぞれ地方ごとに独自の特色を持つ夏祭りが数多く存在します。各地域の文化と伝統を継承しながら、現代まで多くの人々に喜びと楽しみをもたらしています。本記事では、暑い夏の日差しに彩られる、日本と中国の地方夏祭りの魅力をご紹介します。
中国の地方夏祭りについて
四川省:峨眉山火把節(火把節)
「火把節」は、四川、雲南、貴州などの省に居住するイ族、ペー族、リス族、ナシ族、ラフ族などの少数民族の伝統行事です。
一般的に旧暦6月24日から26日にかけて行われ、参加者は火をつけた松明を手に持ち、山を登り、民族舞踊を踊ったり酒を楽しんだりします。
特に、四川省峨眉山市で開催される峨眉山火把節は、中国でも有名な夏祭りです。夜には山頂からの松明の明かりが幻想的な景観を作り出し、一緒に登る人々の団結と勇気を象徴しています。
湖南省:湘西龍船節(龍船競渡)
湖南省湘西地域では、夏に「湘西龍船節」が開催されます。
この祭りでは、龍船競渡というカラフルなドラゴンボートで湖や川下りを競い合います。龍船競渡は、紀元前278年の詩人屈原の死を追悼するための祭りで、現在では端午の節句(通常は6月初旬)に行われます。龍船競渡は中国の古い伝統であり、他の南方の地域でも開催され、龍の象徴として縁起の良い行事とされています。屈原は自らの命を絶つ前に、民衆が彼を救おうと竹の節を詰めた米(粽子)を川に投げ入れたという伝説があります。
山東省:青島国際ビール祭り
山東省青島市では、夏に「青島国際ビール祭り」が開催されます。
この祭りはビールの祝祭として知られ、国内外から多くのビール愛好家が集まります。ビールの試飲や音楽イベント、ビールに関連するアクティビティが楽しめるとともに、地元の文化と国際的な交流も促進します。今年は33回目となり、8月6日まで開催されており、ビール飲み放題コーナーでは300種類ものビールを楽しむことができるそうです。
青島国際ビール祭りは、中華圏で最大のビール祭りであり、青島ビールの原点であるこの都市で開催されます。青島ビールは1903年にドイツ人とイギリス人によって設立され、その影響で祭りは「オクトーバーフェスト」に似た雰囲気を持っています。
日本の地方夏祭りについて
青森県:青森ねぶた祭り
青森県で開催される「ねぶた祭り」は、日本三大夏祭りの一つとして知られています。祭りでは、巨大で芸術的なねぶた(提灯絵)が街を彩りながら歩き、花火や太鼓の音と共に踊り手たちが民族舞踊を披露します。今年の開催日は8月2日~7日です。
「ねぶた」の語源については諸説ありますが、「眠り太(ねぶと)」、つまり「眠りたい」という意味が元になっているとする説が一般的です。夏の終わりに行われるこの祭りは、1年の疲れを祓い新たな気力を養うことを目的としています。
ちなみに青森にある総合リゾート運営会社星野リゾートが運営する「青森屋」では、365日ねぶた祭りを体験する施設があります。
秋田県:竿燈祭り(かんとうまつり)
秋田県の「竿燈祭り」は、日本三大神輿(みこし)の一つとされており、厄よけや五穀豊穣を願う行事として長い歴史を持ちます。
祭りでは、約280本もの巨大な竿燈の明かり(提灯)を担いだ人々が町を練り歩きます。大きいものでは長さ12m重さ50㎏あるとか。提灯は伝統的な絵柄で飾られ、迫力ある行進と神聖な雰囲気が特徴です。
竿燈祭りの起源は「七夕祭り」だと考えられ、その歴史は江戸時代中期頃まで遡ります。当時、家内安全や無病息災を祈って7月7日の七夕祭りの前夜に「ねぶり流し」といわれるお盆行事が行われていました。子どもたちが川まで願い事を下げた笹を流しに町を歩いていましたが、その後、明かりを灯した提灯をいくつも付けた長い竿を十文字に構えた若者たちが、太鼓を鳴らしながら町を練り歩く形へ発展しました。
竿の形が稲穂や俵に似ていることから、豊作祈願の意味も込められるようになりました。これが「秋田竿燈まつり」の由来と言われています。
京都府:祇園祭
日本三大祭りの一つである京都の「祇園祭」は、世界文化遺産にも登録されています。祭りは1か月にわたり、山鉾(やまほこ)と呼ばれる豪華な山車が街を練り歩きます。祇園祭は、伝統的な雅楽(ががく)の演奏や神聖な祭りの儀式が行われ、多くの観光客を魅了しています。
祇園祭のメインイベントである山鉾巡行は7月17日と24日の2日に行われますが、実際には1か月間にわたり様々な祭りが開催されます。これらは「前祭」「中祭」「後祭」などと呼ばれ、それぞれが独特の魅力を持っています。
徳島県:阿波踊り
日本三大盆踊りの一つである「阿波踊り」は、江戸開府より約400年の歴史がある日本の伝統芸能となっています。現代では徳島だけでなく、東京の高円寺をはじめとする複数の土地でも大規模な阿波踊りが開催されています。三味線、太鼓、鉦鼓、篠笛などの伴奏にのって連(れん)と呼ばれる踊り手の集団が踊り歩き、町をにぎわせます。
阿波踊りは「阿波国(現在の徳島県)」が名前の由来で、江戸時代から存在しています。踊り手は「よいさ、よいさ」と唱和しながら、自由で大胆な動きを見せるのが特徴です。この踊りは「阿波国」だけでなく全国的に広まり、現在では日本を代表する盆踊りの一つとなっています。
夏祭りは地元の人々と訪れる観光客が一体となって楽しむ祭り!
日中共に、各地方特有の夏祭りを紹介しましたが、どの祭りも地元の人々だけでなく、訪れる観光客が一体となって祭りを楽しむことができ、地域の活気と絆を感じることが魅力の一つです。
日本の夏祭りは、地域の文化や伝統を体験するだけでなく、地元の人々と交流する貴重な機会でもあります。
巨大な提灯絵やカラフルなドラゴンボート、豪華な山車の行列など、見どころがたくさんあります。
夏祭りは日本の伝統的な行事であり、夏を存分に楽しむことができます。皆さんもぜひ、日本の地方夏祭りに参加して、素晴らしい思い出をつくってください!
【参考文献】
東北三大祭りのひとつ「秋田竿燈まつり」の基本情報と味わい方を解説!