今後、日本での外国人労働者の受け入れが盛んになることが予想されます。その理由は、「新たな在留資格」の制定にあります。
平成29年4月に施行された改正出入国管理法で特定技能というものが新設されました。これは、外国人にとって「新たな在留資格」とも言える内容であり、今後ますます外国人労働者の流入があるでしょう。
今回は、新たな在留資格についての説明と合わせて、何の職種が需要があるのかを解説します。
「特定技能」とは何か?
今回施行された「特定技能」とは、外国人にとっての新たな在留資格となるものであり、人材不足が深刻な業種を対象に、外国人の労働力を活用しようという試みです。一定の技能と日本語能力がある外国人に対して、最長5年の在留資格を認めるなどの内容が含まれます。
特定技能は2種類ある
特定技能は1号と2号があります。定義と合わせて2つの違いについて説明します。
【定義】
特定技能1号
“本邦の公私の機関との雇用に関する契約に基づいて行う特定産業分野であって相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する活動”
特定技能2号
“本邦の公私の機関との雇用に関する契約に基づいて行う特定産業分野であって熟練した技能を要する業務に従事する活動”
引用:法務省 特定技能(http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri07_00196.html)
特定技能1号は、ある程度の知識や経験を持つ外国人に与えられる資格です。1号の場合、単純作業や比較的簡単だとみなされる仕事に就くことができます。技能実習(最長5年)を修了、もしくは技能・日本語能力試験に合格すると、特定技能1号が取得できる仕組みです。在留期間は通算5年、家族が一緒に滞在する権利は含まれていません。対象となる業種は14種あります。
◼️特定技能1号 対象業種
1.農業
2.漁業
3.飲食料品製造
4.外食
5.介護
6.ビルクリーニング
7.素材加工
8.産業機械製造
9.電気・電子情報関連産業
10.建設
11.造船・舶用工業
12.自動車整備
13.航空
14.宿泊
特定技能2号は、1号よりもハードルが上がります。試験に合格した後に、熟練した技能を求められる仕事に就くことができます。在留資格の更新は、1~3年ごと。更新時の審査に通ることができれば、何度でも更新ができます。配偶者や子供も日本に住むことも可能です。主に労働力として期待されている職種は、建設業と造船業。この2職種に関しては、2021年度から試験開始予定です。
「資格外活動」よりも長く働くことができる
留学をはじめとした在留資格では、基本的に就労が認められていません。しかし、「資格外活動」の許可があれば、週に28時間以内のアルバイトができます。資格外活動をしている人数はこの10年で約20万人以上増加しています。せっかく外国人労働者が増加しているにも関わらず、時間に制限されてしまっていたため、政府は「特定技能」という在留資格を新設し、勤務時間並びに在留期間を長めに設定しました。特定技能の場合、所定労働時間は雇用先の労働者と同じです。企業は長期的に労働力を確保できるようになり、外国人は働く窓口が増え、長く働くことができるようになりました。
「技能実習」との違いは、働く目的にある
特定技能と聞くと、関連して浮かぶのが「技能実習」という在留資格です。特定技能と技能実習の違いは、働く目的にあります。技能実習生には、日本の技術を習得してもらった後に、母国で生かしてもらうという狙いのもと勤務してもらいます。そのため、「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない(技能実習法第3条2項)」という決まりがあり、労働力を補うための雇用は基本的にできません。対して、特定技能は、日本の人手不足解消を目的としています。そのため、企業は労働力として外国人を受け入れる一方、労働条件を守る責任があります。また、技能実習では転職は認められていませんでしたが、特定技能では同じ業務区分であれば転職が認められました。日本の企業・外国人にとってもメリットが多いのが特定技能の在留資格であり、外国人にとって働きやすい職場が増える兆しとも言えます。
日本在留を希望している95%はアジア国籍
日本への就職を考える外国人で、在留資格を許可された国を比較してみると、アジア圏が主であることがわかります。
平成29年の許可状況を法務省入国管理局のデータで見てみると、
1. 中国:10,326人(前年比713人、6.5%減)
2. ベトナム:4,633人(前年比2,145人、86.2%増)
3. ネパール:2,026人(前年比859人、73.6%増)
出典:平成29年における留学生の日本企業等への就職状況について(法務省入国管理局)
4. 韓国:1,487人(前年比65人、4.6%増)
5. 台湾:810人(前年比121人、17.6%増)
このように中国が一位であり、ベトナムやネパール国籍の許可人数がグッと上昇していることがわかる。日本への在留許可を行なった全体の約95%を、アジア国籍が占めている。今後もアジア系外国人労働者の許可申請は増加し、在留資格を経て働く人が増加することが推定されます。また、企業としてもアジア人労働者を受け入れる体制を整える必要が強くあるでしょう。
外国人雇用管理指針の改正
「特定技能」が新設され、「外国人雇用管理指針」も改正されています。「外国人雇用管理指針」とは、企業が外国人労働者を雇う際に、注意すべきガイドラインのことです。内容は、募集時や労働面での説明を労働者側の母国語や簡単な日本語を使用すること、賃金や労働時間をしっかりと管理すること、帰国費用の援助などについての規定です。今後さらなる改訂が予想され、外国人労働者が働きやすい環境が徐々に整っていくことでしょう。
まとめ
新しく新設された、「特定技能」という在留資格。この資格により、外国人労働者がより働きやすく、生活しやすい環境が今後整備されていくことが予想されます。また、企業側は外国人労働者を受け入れるための体制づくりについて積極的に動くことにより、新たな労働力の確保やグローバル人材確保により新たな視点が生まれ発展・成長へとつながるでしょう。