日本ではほぼ全域で梅雨が始まりました。しかし、日本ではこの時期を「雨季」とは表現しません。雨季とは、1年の中で最も雨の多い季節を指します。日本では6月から7月、9月から10月が「雨季」にあたりますが、これらは梅雨や秋雨と呼ばれています。
では、なぜ6月から7月の雨季を「梅雨」と呼ぶのでしょうか。
まず、「梅雨」という漢字は中国から伝わったとされています。複数の説がありますが、一つはこの時期に雨が多く、カビが生えやすいことから「黴雨(ばいう)」と呼ばれていたという説です。しかし、「黴」という漢字を使うことは難しく、またジメジメとした感じが伝わることから、「梅」という漢字が当てられるようになったとされています。
もう一つの説は、中国の長江下流地域で梅の実が熟す初夏の時期と雨季が重なることからきているというものです。つまり、梅雨という言葉には日本と中国の関連があるのです。
ちなみに、「梅雨」と呼ばれる雨季は、日本、中国、韓国、そして東アジアの一部の地域に限られます。このような特殊な呼び方をするので、梅雨が特別な季節であると感じられるのかもしれません。
そこで今回は、憂鬱に感じやすい雨の日や梅雨の季節を、日本と中国のそれぞれで楽しく過ごす方法についてご紹介します。
梅雨の楽しみ方1:紫陽花を楽しむ
梅雨の季節といえば、日本では紫陽花が代表的ですね。青や紫、ピンク色の可愛らしい花々が街並みを彩ります。
これらの花の色の違いは、土壌の酸性度によるものだとご存じでしょうか。土壌が酸性の場合は青色の紫陽花が、アルカリ性の場合はピンクの紫陽花が咲くそうです。土壌の性質を利用して、自分の好みの色の紫陽花を育てる楽しみもありますね。
日本で代表的な紫陽花の名所といえば、鎌倉の明月院(めいげついん)です。参道の両脇には2500株もの濃く鮮やかな青い紫陽花が広がります。また、ハナショウブなど他の季節の花も楽しむことができ、現在が見頃だそうです。
一方、中国では紫陽花が有名なスポットとして上海の上海共青森林公園があります。ここではなんと50種類を超える2万株もの紫陽花が咲き誇っています。特設イベントも6月18日まで開催されているようです。
ぜひ足を運んで、これらの素晴らしい場所で紫陽花を楽しんでみてはいかがでしょうか。
梅雨の楽しみ方2:雨の音が心を和ませる
雨が降っている時に、その音に意識を向けたことはありますか? 雨が降ると建物に逃げ込み、雨の音を聞く機会はあまりないかもしれません。しかし、実は雨の音には人をリラックスさせる効果があります。
まず、「1/fゆらぎ」という概念があります。これは自然音に含まれ、規則性と突発性、予測性と逸脱性が適度に組み合わさったゆらぎを指します。この1/fゆらぎは、心臓の鼓動などの生体リズムと調和し合う特徴を持っており、心地よさをもたらすと言われています。
また、雨の音には高周波の音が含まれています。この高周波は人の耳では聞こえない領域に属しますが、脳はこの音によってα波を発生させます。α波は心をリラックスさせるだけでなく、落ち着いた状態で脳の活性化を促し、記憶力や集中力、免疫力の向上にもつながるとされています。
少し窓を開けて、ゆったりとした気持ちで雨の音を聞いてみることをおすすめします。その心地よさを感じながら、日常の喧騒から一時的に解放されることでしょう。
梅雨の楽しみ方3:五感を楽しませる花ークチナシ
梅雨の時期に香りで楽しませてくれる花の一つが、梔子(クチナシ)です。クチナシは三代香木の一つで、暖かい地域を好むため、日本では西部や四国・九州、中国では南部に分布しています。ちょうど6月から7月にかけて、梅雨の時期に美しい純白の花を咲かせます。
クチナシは甘い香りが特徴であり、その香りと美しさによって人々を魅了します。日本と中国の両国で、クチナシは歌詞や詩にも詠まれることがあります。また、食用としても親しまれています。そのため、クチナシは五感を楽しませてくれる花と言えるでしょう。
梅雨の楽しみ方4:雨の日には火鍋?
中国では雨が降ると火鍋を食べたくなるという人がいます。実は、これは健康的な体づくりにつながる理にかなった行動なのです。
雨が降ると体に湿気が入り込みやすく、だるさや疲労を引き起こしてしまいます。中医学の観点からは、辛い食べ物や生姜・にんにく、冬瓜・白菜などの野菜は、体から余分な熱と湿気を取り去る効果があるとされています。また、冷たいものは代謝の悪化を引き起こすため、温かいものが望ましいとされています。そのため、雨の日には火鍋を食べることが一番元気になれるグルメとされているのです。
重慶が激辛の火鍋が有名な理由の一つは、重慶が年間平均相対湿度70%を超える高湿地域であるため、体の除湿を助けるためとも言われています。
日本でも火鍋専門店や中華料理店など、本場の火鍋を楽しむことができる場所が各地にあります。雨の日には友人や家族と一緒に火鍋を食べに行くことも楽しみの一つとなるでしょう。
いかがでしたでしょうか。憂鬱と感じる梅雨ですが、ご紹介したように梅雨ならではの楽しみ方があり、特別な魅力があります。
新たな視点で日常を楽しむことで、充実した時間を過ごすことができるでしょう。ぜひ梅雨の季節を活気に満ちたものにするために、様々な楽しみ方を試してみてください。
【参考文献】
「雨の音」がストレス解消に良いのはなぜ?オフィスBGMによる休憩時の「雨の音」効果