【中国農村部の介護】村それぞれの模索と躍進

ご承知のとおり中国では、現在少子高齢化が急速に進んでおり、高齢者はすでに2億6000人に達しています。2025年には、60歳以上が3億人を超えると予測。

いま政府や地方の各省では、高齢者問題に力を入れ、いろいろな新しい政策を打ち出しているなか、大都会や都市部の介護サービスは急速に発展しています。

それでは、今回は農村部を例にして、現在高齢化の問題にどのように対処し、その解決に向けてどのような政策を出しているかを詳しく見ていきたいと思います。

中国は都市部と農村部に介護格差?

今までの都市部と農村部の介護格差とは?

・都市と比較して、農村地方のインフラは比較的弱い。

・地方は医療面においても都市ほど良くはない。

・第三者が提供するサービス産業は、地方は都市ほど発展していない。

農村部に多い「留守番老人」は、都市に住んでいる子供たちと同居するために、田舎を離れることを望んでいない。

・高齢者はどのように健康を維持し、 病気の高齢者は誰が介護するかは、農村部の高齢者介護の大きな問題。

中国農村部の介護の現状

中国人民大学の副学長で老年学研究所の所長である杜鹏教授によると、中国は現在世界で最も高齢者が多い国であり、高齢化の速度も速い。 人々が安心できるように、高齢者の在宅介護をいかにうまく進めていくかは、小さなトライではない。 すべての地域で、常にサービスを強化し、実情に応じた在宅介護モデルを模索すべきであると指摘しました。

高齢化に積極的に対応し、在宅介護の「障害」や「問題点」を解消し、高齢者がより健康で幸せで質の高い生活を送れるようにすべきです。

今の在宅介護サービスセンターは、農村部の介護サービスの欠点を補っています。

中国農村部の介護に関する政策

中国人民大学副校長、老年学研究所所長の杜鹏教授によると、政府報告「第14次5か年計画」には、農村部の高齢者介護サービスの欠点を補う重要なポイントが含まれています。例えば、

1.高齢者介護サービスの不足に対応するため、各村では集中型の高齢者介護サービスセンターを設立することを義務付けています。 深刻な経済的困難または重度の障害を持つ人々に対し、各村は「第14次5カ年計画」期間中に、少なくとも1つの高齢者の施設を建設しなければなりません。

2.同時に、現在の技術開発と相まって、都市は農村へのサービスを拡大し、技術指導を含む農村の高齢者介護施設の建設と投資を増やす。長期介護保険は多くのところで試験的に実施され、農村部もカバーされます。こうしたシステムが確立されれば、介護サービスが農村部でも徐々に役割を果たすようになるでしょう。

中国農村部の介護の実例

現在農村部で実施しているいくつかの新しいモデルの実例を見てみましょう

1.下姜村総合在宅高齢者介護サービスセンター

浙江省杭州市淳安県の楓樹嶺にある下姜村では、高齢者に介護サービスを提供する在宅介護センターを設立しました。

在宅介護センターは3階建てで、
1階は、食堂で村の高齢者が毎日の食事ができる場所
2階は、診療所やレジャーエリア
3階は、読書室、卓球室など、高齢者向けのレクリエーション施設となっています。

【寄付金で建設】

この建物は、州慈善連盟のマッチングを通じて、ある企業から高齢者向けに100万元を寄付され、その後も続いた寄付により高齢者向けの食堂や娯楽施設、村の診療所等が建設されました。

【下姜村は第二の故郷】

投資した企業は、この村を第二の故郷とし、ここでの変化と発展を目の当たりにして、自分の能力の範囲内で村のために何かをしたいという想いがありました。

【共同繁栄のもとで】

共同繁栄のため、一般の人々の生活を改善し、農村と都市の介護能力のギャップを埋めることは最優先事項です。

近年は農村の介護制度の構築、総合的推進によって、村の高齢者向け食堂の建設やレジャー・文化講堂の再建を通じて、草の根の高齢者介護サービス、および高齢者の娯楽と健康の維持などにより、在宅介護における高齢者の幸福感も大幅にアップしました。

在宅介護サービスセンターを利用した後、高齢者や村の住民は、ハードウェアのアップグレードによってもたらされた便利さと、本当の幸福を感じることができます。

2.江蘇省東台市梁垛鎮臨塔村デイケアセンター

【江蘇省は農村部介護の新モデルを模索】

江蘇省は、国内で比較的高齢化が進んでいる省であり、農村部の高齢者人口は約940万3千人、80歳以上の農村部の高齢者は約146万9千人です。

同省では、農村部の高齢者が安心して老後を過ごせるよう、新しいモデル事業を構築しました。

【江蘇省東台市梁垛鎮臨塔村で、デイケアセンターを設立】

蘇省東台市梁垛鎮臨塔村では、デイケアセンターを設立し、いろいろなサービスを提供しています。

毎朝8時30分にサービスセンターが開店、そのサービスとは

1.食事や健康診断などのサービスを提供

2.ヘアカット、フットバス、ネイルクリップ、マッサージも無料でサービスを提供

3.「一人で食べると味が分からないが、一緒に食べると美味しい」、村では一人当たり6元の補助金を出してくれるが、ここで食べると3元払うだけで栄養がある美味しい食事をいただけます。

4.定期的に血圧、血中酸素、心拍数などを測定します。

 

【高齢者自宅に4GネットとSOS通話システムを設置】

高齢者の家には4Gネット接続が設置されています。またSOSワンキー呼び出しシステムを設置し、気分が悪くなったときは、いつでもアラームを鳴らすことができるようになっています。

村には80歳から90歳までが156人、90歳以上の高齢者20人がいます。 約280人高齢者が一人暮らしです。

この村では、高齢者自宅にネットとSOS通話システムを設置することにより、スマート介護サービスを提供しています。

今後も継続的に改善し、デイケア、健康管理、医療支援サービス、高齢者向けエンターテインメント、スマートホーム等を統合したサービスを提供し、高齢者が安心して老後を楽しむことができるように模索を続けています。

3.山西省呂梁市石楼県裴溝中陽村のデイケアセンター

農村部の若者や中年の人々が都会に行って働くことが増えるにつれて、高齢者介護の問題は厳しいものになりました。

【山西省呂梁市石楼県裴溝中陽村はデイケアセンターを設立】

山西省呂梁市石楼県裴溝中陽村のデイケアセンターは、一人暮らしの高齢者のために、家族向けに多様な高齢者介護サービスプラットフォームを構築し、日常介護、食糧供給、文化的娯楽を提供しています。精神的な快適さ、健康診断、その他高品質で効率的なサービスも提供しています。

「デイケアセンターは高齢者のよりどころ」

デイケアセンターには、42人の高齢者がおり、最年長者は87歳、最年少は75歳です。 さまざまな活動が高齢者同士のコミュニケーションの場を築き上げ、まさに「第二の故郷」となっています。 高齢者は日中は介護室で生活を楽しみ、夜は家に帰って休憩します。

デイケアセンターは「子どもたちの親孝行と社会的悩みを共有」という責任を負っています。

【村の高齢者が抱える主な2つの問題】

村に取り残された高齢者の生活は、主に2つの問題を抱えています。

1.食事の問題

2.精神的な孤独

田舎に残された高齢者のほとんどは、それぞれの場所に住んでいます。普段は誰にも相手にしてもらえなくて、テレビを見る以外に話す相手もいません。

病気になったとき、食事や検診など一連の問題をどう解決するのか困っていました。

 

【村で集金しデイケアセンターを設立】

高齢者の現状脱却のため、村の委員会はデイケアセンターの建設を決めました。

主な集金先

1.村の出資

2.高齢者の出資

3.社会からの寄付

4.太陽光発電収入

5.自力で稼ぐ

以上、五つの部分から資金を調達し、村の高齢者デイケアセンター建設の財政としました。

村の委員会は、デイケアセンターの仕事を公共福祉の場として取り上げ、日常業務を担当すると同時に、社会団体、思いやりのある人々、ボランティアの参加を積極的に奨励し、高齢者が暖かさとケアを十分に感じるようにしました。

中国の高齢者社会は、都市部だけではなく、農村部も同時に進行しています。それに農村部の若者が都会に行って働くなか、取り残されよりどころがなくなり、経済的も、環境にも都会より恵まれなくなりました。

政府と村の人々は力と知恵を絞り、いろいろな対策を取りいれています。これから農村部に目を向け、田舎介護を取り上げたいと思います。どうぞ次回をご期待ください。

 

【参考資料】

人民网、腾讯、潇湘晨报、江苏省民政厅、杭州日报、养老运营消消乐

■ライタープロフィール
名前:姜春姫(きょう・しゅんき)女性
「医・職・住」ラボでは、グローバルな視点で、日本と中国との高齢者が直面する医・職・住の問題を提起し、特に日本に住んでいる外国人の問題を提起する。
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