「技能実習制度」の廃止を求め、人材確保・人材育成に向けた新制度創設を提示

外国人の人材育成による国際貢献を目的とした「技能実習制度」。同制度のあり方を検討する政府の有識者会議は10日午前、法務省内で会合を開き、現行制度の廃止を検討するよう求める中間報告書の原案を提示しました。そして新たに「人材確保」と「人材育成」を目的とする新制度の創設を促しました。

【政府の有識者会議】

NHK報道によると、政府の有識者会議は2023年4月10日に開かれた法務省内の会合で「労働者として受け入れ続けるのは望ましくない」とし、現行制度の廃止を検討する中間報告書の原案を示しました。

【新制度案について】

以下の内容が新制度の原案として提示されました。

(1)人材育成だけではなく、働く人材の確保を主な目的に掲げ、これまで原則できなかった「転籍」と呼ばれる働く企業の変更も、従来に比べて緩和し、一定程度認めるとしている。
(2)3年以上の実習を修了した技能実習生が試験を免除される「特定技能」により、円滑に移行できるようにして、中長期的に活躍する人材の確保につなげるとしている。
(3)実習生の受け入れを仲介してきた「監理団体」について、受け入れ企業への適切な監査を怠り、行政処分を受ける例が相次いでいるため、新たな制度では企業からの独立性の確保など、要件を厳格化するとしている。

【技能実習制度とは】

技能実習制度は、開発途上国への技能移転という国際貢献を目的に1993年に始まりました。建設業や食品製造業など86職種で、最長で5年間、働きながら技能を学ぶことができます。

【外国人技能実習制度の沿革】

・1990年代後半から、日本の産業界は人手不足に悩まされ、技能実習生を受け入れる制度の整備が求められるようになる。

・1990年代末から、技能実習生の受け入れは官民挙げて進められ、2003年には法制化された。

・2009年には、技能実習生受け入れ事業者に対する登録制度が導入された。

・2017年には、改正入管法に基づき、「技能実習」から「特定技能」に名称が変更され、新たに技能実習生1号制度が創設された。

・2020年には、改正入管法に基づき、特定技能1号制度が創設され、技能実習生1号制度とともに、外国人労働者の受け入れが拡大される方針となった。

出入国在留管理庁によりますと、技能実習生は2022年年6月末時点で、およそ33万人で、5割以上がベトナム人です。

滞在期間や実技試験の合格によって「1号」から「3号」に分類され、2020年度の月の平均支給賃金は「1号」がおよそ17万円、「3号」が20万円余りでした。

体監理型技能実習制度ができてから17年も経っていました。

【制度の是非について】

技能実習生は、人材難が深刻な地方や中小企業でニーズが高い一方、違法な低賃金で長時間労働を強制されたり、実習先で暴力を受けたりするケースがあとを絶ちません。

また、実習生の5割以上が母国の送り出し機関や仲介者に手数料などを払うため、来日前に借金を背負っています。転職や「転籍」と呼ばれる働く企業の変更も原則できないことなどから、2021年に職場から逃げ出した実習生はおよそ7000人に及びました。

こうした実態を見直すため、2022年11月に政府の有識者会議が設置され、12月から4回にわたって議論が行われてきました。

【実習生実態】

日本人を雇う場合より費用がかかることもありますが、人手不足の中、実習生に頼らざるを得ないのが現状です。

もし、すぐに仕事を辞めて給料の高い都市部の企業などに転籍するようなことになれば、立ちゆかなくなるといいます。

・縫製会社「アイエスジェイエンタープライズ」代表・井川貴裕氏は、「日本人の新卒と比べて外国人の方が費用負担はとても大きく、すぐに転籍されるとその費用に見合わず、厳しい。日本人と同様に外国人の人権を守るのは当然だが、地方の小規模事業者の実情を踏まえて、今後の議論を進めていってほしい」と話していました。

技能実習生を支援する団体

外国人技能実習制度をめぐっては、長時間労働や賃金の未払いなどのトラブルのほか、職場での暴力といった人権侵害の訴えもあとを絶ちません。

東京・中野区にある「日越ともいき支援会」では、2020年からベトナムからの実習生などの保護や支援にあたっています。

外国人の労働問題の専門家 ー「これからが勝負」

外国人の労働問題に詳しい日本国際交流センター・執行理事 毛受敏浩(めんじゅとしひろ)氏は、中間報告のたたき台について「さまざまな矛盾を露出させてきた技能実習制度を廃止して、ゼロから新しい制度を作るという決断は非常に大きく、世界に対して日本が本当に変わっていくんだという明るいメッセージになる」と評価しています。

一方で「次にどんな新しい制度ができるのかというのが問題で、付け焼き刃的な制度改革になると、日本は変わらないんだということになってしまう。多くのステークホルダーが関わるシステムなので、新しい方向性を見いだすのは難しいが、将来につながるような制度になっていくかこれからが勝負だ」と話しました。

その上で、「コロナ禍から回復し世界中で人手不足が明確になってきている中で、円安などの影響もあり、外国人にとって日本は必ずしも魅力的な国とは言えないのが現実だ。外国人を安く使えるというこれまでの認識から決別し、外国人が安心して日本で活躍できる制度を作っていくべきだ」と話していました。

【有識者会議は秋ごろをめどに、最終報告書を提出】

新たな制度への移行を求めるたたき台について、10日の有識者会議では、委員からおおむね賛同する声が聞かれたということです。

ただ、有識者会議は今秋に最終報告をまとめる予定。技能実習の廃止を機に、外国人に国内で活躍してもらうための制度全体のあり方を再検討してもらいたいです。

東南アジアで経済成長が進み、賃金が伸び悩む日本は働き先としての魅力が低下しています。韓国は04年に外国人を労働力として正面から受け入れる政策へ転換しました。日本政府の挽回への残り時間はあまりないと肝に銘じるべきです。

参考資料:

日中新聞、読売新聞、朝日新聞、公益財団法人国際人材普及振興協会

 

 

韓国語:「技能実習制度」の廃止を求め、人材確保・人材育成に向けた新制度創設を提示

 정부의 전문가 회의는 2023년 4월 10일 “노동자로서 받아들이는 것은 바람직하지 않다”며, 현행 제도의 폐지를 검토하는 중간 보고서 초안을 제시했습니다. 그리고 새로운 “인재 확보”와 “인재 양성”을 목적으로하는 새로운 제도의 창설을 촉구했습니다. 동남아시아에서 경제 성장이 진행되면서 임금이 늘어나지 않는 일본은 일자리로서의 매력이 감소하고 있습니다. 한국은 04년에 외국인을 노동력으로 정면으로 받아들이는 정책으로 전환했습니다. 일본 정부의 회복을 위한 남은 시간은 그리 길지 않다는 것을 명심해야합니다.

中国語:「技能実習制度」の廃止を求め、人材確保・人材育成に向けた新制度創設を提示

政府的专家会议于2023年4月10日表示,“继续作为劳动力接受并不可取”,并提出了废除现行制度的中间报告草案。随后,他们督促创建旨在“确保人才”和“培养人才”的新制度。 随着东南亚经济的增长和日本工资增长的停滞,日本作为工作场所的吸引力正在下降。韩国于2004年转变了对外国人作为劳动力接受的政策。日本政府应该牢记挽回的时间不多了。

英語:「技能実習制度」の廃止を求め、人材確保・人材育成に向けた新制度創設を提示

On April 10, 2023, a government panel of experts stated that “continuing to accept foreign workers as labor is not desirable” and presented a draft of an interim report considering the abolition of the current system. They also urged the establishment of a new system aimed at securing and developing human resources. With economic growth and wage stagnation in Southeast Asia, Japan’s attractiveness as a place to work is declining. In 2004, South Korea shifted its policy to actively accept foreigners as labor. The Japanese government should bear in mind that there is not much time left to make up for lost ground.

 

■ライタープロフィール
名前:姜春姫(きょう・しゅんき)女性
「医・職・住」ラボでは、グローバルな視点で、日本と中国との高齢者が直面する医・職・住の問題を提起し、特に日本に住んでいる外国人の問題を提起する。
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