稲葉貞子女史は、子育てに奮闘しながら日本国家資格のはり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧の資格、登録販売者資格を取得し、日本と中国両国の国家免許をもっている数少ない女性鍼灸師。人々の健康に貢献し、多くの人々に感謝され愛されています。本日は、子育てと共に中医師として日々成長し続けるその原動力はなにか、直接インタビューをしてきました。どうぞ御覧ください。
■プロフィール:稲葉 貞子
・中国吉林省出身40代
・中国国家資格:中国中医師
・日本国家資格:はり師免許、きゅう師免許取、あん摩マッサージ指圧免許、登録販売者資格
・北里大学東洋医学研究所 鍼灸臨床研修終了
・現在東京安泰漢方鍼灸院院長
ドラマ「おしん」に心ひかれ日本留学へ
━━━貞子先生は、いつ日本にきましたか?そのきっかけは何ですか?
貞子先生:1997年4月、千葉の日本語学校へ入学するため日本にきました。子どもの頃、ドラマ「おしん」を見るたびに祖母が桜の話、日本人の話をよく聞かせてくれました。その話が子どもの私の心に日本への夢を植えつけたと思います。東洋医学部を卒業して病院に就職したその年、一足先に日本へ留学した同級生から、仕事をしながら楽しい留学生活を謳歌していると電話をもらいました。それがきっかけで、医学を勉強したい一心で留学生活をスタートしました。鍼灸・あん摩マッサージ指圧師として仕事している今になってふりかえってみると、無謀なスタートでした
日本と中国両国の国家免許を取得
━━━中国では中医を習ったそうですね。日本の中医と違いはありますか?
貞子先生:医学教育システムから資格免許、医療施設、診断方法、漢方処方などに大きな違いがあります。詳しく説明すると一冊の本になりますが、簡単に言えば次のようなことです。中国の中医は、中薬、鍼灸、推拿、導引(気功)などの治療法を含めます。日本でも中薬に等しい生薬を使う漢方と、鍼灸と推拿に等しい鍼灸あん摩マッサージ指圧の治療法があります。しかし、漢方は顆粒剤を基本とし、古来の処方が多く、医師は「漢方マニュアル(手引)」により、漢方薬を処方することができ、薬剤師と登録販売者は漢方をアドバイスすることができます。鍼灸やあん摩の施術は鍼灸あん摩マッサージ指圧師資格を取得したもの以外、医師の資格があれば施術できます。
中国と日本の文化の違いは?
━━━中国と日本での大学生活を少し紹介していただけますか?
貞子先生:中国と日本での大学生活は青春を謳歌できて楽しかったです。
中国での大学生活で心に残る一番の出来事は、名中医紀青山教授との出会いでした。当時、鍼灸理論を教えてくれる紀教授の許可をもらい、時間さえあれば教授の診察施術室へお邪魔しました。研修医、研修生が少ない冬休み夏休みになると、手とり足とりで鍼灸を指導してもらい、患者さんも快く練習台になってくれました。
日本での最初留学生活より、鍼灸仕事したくて再スタートした鍼灸学校生活の話をしましょう。36歳で結婚した年、母が肺がんのステージⅤと診断され、即漢方関係の仕事をやめてしばらく一緒に治療に専念しました。母の病状が落ち着いたころ、日本へ帰って旦那と話し合った末に、鍼灸学校へ入りました。入学して間もない頃、晩婚で自然妊娠を望んだ私たちがコウノトリを見るなんて…在学中に妊娠出産し子育て始めました。家族と同級生の支えがなかったら、中退したかもしれない学校生活を送りました。
━━━大学卒業後、中日両国で仕事を経験されましたが、企業文化などの違いはありましたか?また、あればどう解決しましたか?
貞子先生:制度や協会の取り組みを会社が守り、社員一人一人が真面目に守り、手順通り商品を生産し、消費者に提供していました。
子育てと学問を両立
━━━日本で子育てを経験されましたが、難しいことはありましたか?特にたいへなところは何ですか?
貞子先生:在学中に生まれた子どもを生後3ヶ月目から入園させ、鍼灸あん摩マッサージ指圧師免許を取得するため無我夢中で走りました。順調に免許を取得しましたが、子どもが4歳になった時にやっと親子の間に溝があることに気づきました。園での生活を聞いても目を合わせずに「よかった」「楽しかった」だけで、それ以上会話を求めようとしない我が子。どうすれば良いか迷って焦っていた時、子ども総合センターを紹介してもらい、相談を受けました。普通の親子関係になって、会話ができるようになるまで、まるまる1年かかりました。
子供と一緒に成長するため鍼灸院を立ち上げる
━━━日本で独立し、会社を立ち上げました。そのきっかけを教えください。
貞子先生:子供が小学校1年生になったとき、一緒に成長しようと思い、小さな鍼灸院を開きました。
━━━今の診療所を紹介してください。
貞子先生:青砥駅から近い静かなマンションで開いたサロンような治療院です。プライバシーを守る完全予約制として、誰にも気兼ねすることなく、安心して相談して施術を受けられる空間です。
主に不妊症、婦人科疾患の悩みを中心に施術しています。お一人お一人にたっぷり時間を割く為に完全予約制を導入しているので、待ち時間がありません。
━━━院長として、母親、主婦として頑張れる源はなんですか?
貞子先生:亡き母が自立するようにといつも背中をソーと押してくれます。9年前、肺がんによりあの世へ行った母が、どんなに突然のことがあっても惨めにならないよう、成長した子供に迷惑をかけないためにも、女性は自立しなければならないとよく言われました。
社会奉仕ー老人ホームに訪問診療
━━━老人ホームの介護について経験をお持ちですね。
貞子先生:老人ホームで訪問マッサージをしたことがあります。老人ホームは自立する方から心身とも不自由な方まで利用者は幅広いです。施設を経営する法人は違いますが、どこの施設でも一人一人に合わせて、その人に必要なお手伝いをしていました。ほとんどの施設には評判が良いいろんなサービスがありますので、自立の方は必要なサービスを自由自在に頼めます。
在日華僑華人の介護に備えて
━━━日本には華僑華人が100万近くいます。将来の介護に備えて欲しいものは何ですか?
貞子先生:ピンピンコロリは一番理想ですが、現実にはネンネンコロリの方は少なくありません。訪問マッサージをする時、93歳の方に教えてもらいました。個人差がありますが、ご参考まで。
まず、仕事だけではなく、定期的に運動と社会活動をすること。
次に、毎日肛門括約筋運動を3回ほどすること。93歳になったがおむつをしていないと自慢していました。
そして、肺経絡の流れに沿って毎日マッサージをすること。包丁を握れなくて自立生活を諦めて、施設に入りましたが、マッサージを受けることにより箸が持てるようになりました。
今後の抱負
━━━今後の抱負を話して頂けますか?
貞子先生:鍼灸の道に入ってもう20年以上経ちましたが、まだまだ先輩の後ろを追っかけているところです。これからの道のりも長いかもしれませんが、諦めずに現代文献と古文を読み続けて、実践してみて、後輩に役に立つ資料を残していきたいです。
■ライタープロフィール
名前:姜春姫(きょう・しゅんき)女性
「医・職・住」ラボでは、グローバルな視点で、日本と中国との高齢者が直面する医・職・住の問題を提起し、特に日本に住んでいる外国人の問題を提起する。
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