日本語教師として中国・天津の南開大学へ!シニア世代のグローバルな生き方〈最終編〉

70歳を過ぎても脚力をつけるためのランニング、脚力をつけて登山、登山して写真撮影というように、日常生活を送っていらっしゃる土肥先生、前回に続き、天津での仕事、生活体験についてインタビューしました。土肥先生がグローバルな視野をもって、どのように中国の大学で教鞭をとってきたか、その魅力についてご紹介します。

■プロフィール
名前:土肥哲英(男性) 1945年生まれ、75歳。
神奈川県立の高等学校で国語を教える。2年間ほど中国天津にある名門校・南開大学で日本語を教えた。
その後、神奈川県の高校に戻り、60歳で定年退職し現在に至る。

北京から天津へ移動

━━━北京で中国をミニ体験後、天津の南開大学までどのように移動しましたか?
土肥先生:4月3日、私は午後5時25分の列車で天津に向かいました。これから先のことに一抹の不安を感じながらも、軟席(日本のグリーン席にあたる)に座りながら果てしなく広がる田野に目を奪われていると、早春の日は早くも落ちてしまいました。
天津に着くとプラットホームの人波にもまれ、ようやくのことで改札口を出ました。関係者の出迎えを受けつつ、暗がりの路地に案内されました。そこには南開大学の車「上海という乗用車」がまっていました。誰の顔ともわからぬうちに専家楼(レストラン)に到着し、夕食の手配をしたかと思うと、私を送ってきた人達はあっという間に出て行ってしまいました。
専家楼での夕食時間はすでに終了しているとみえて、店内には誰もいない。困惑しながらもテーブルに着くと、同じ南開大学で日本語を教えている池上正治氏が姿を現しました。初対面の挨拶を交わしつつビールで乾杯。異国の地でようやく心が安らいできました。

宿舎は専家楼

━━━最初の住まいはどうでしたか?その時の状況を教えてください。
土肥先生:最初の宿舎は天津大学の専家楼でありました。専家とはその道の専門家のことであります。そして外国人専門家のための専用宿舎が大学には用意されていました。しかし私が赴任したときには、南開大学には専家楼はなかったです(一年後に南開大学でも専家楼が建設される)。前任者からは、天津飯店(天津ホテル)の一室を確保してあるという情報が入っていたのだが・・・・・・。理由はともあれ、私にとっての専家楼での生活は始まりました。
専家楼の部屋は204号でありました。この204号室は、今でも懐かしい響きとなって私の耳に残っています。専家楼には清掃などを担当する服務員の人がいました。中国語が全く分からなかった私も、出かける時には服務員に「我走了―いってきます」と挨拶し、戻ってきた時には「我回来了―只今戻りました」と話せるようになりました。専家楼での食事は、自分で作ることもあったが、基本的には食堂のメニューにお任せでありました。「酸辣湯」は忘れられない味の一つであります。

大学授業



━━━当時南開大学日本語課の状況を教えてください。
土肥先生:南開大学日本語学部は各学年に一クラス、各クラス20名程度の学生数で、日本の大学の語学系の学科と同様に女子学生が多かったです。私が赴任した当時、中国の全学生数は全人口の2パーセントともいわれ、それだけに優秀な人材が多く集まっていました。各学年ともに学生の年齢に幅があり、日本的にいえば現役入学の学生が少なく、むしろ過年度生の方が多かったように思いました。

━━━当時南開大学の時間割を教えてください。
土肥先生:時間割は午前4時間、午後2時間、10分の休憩を挟んで50分の連続2時間が授業単位でした。夏期間と冬時間と設けられていて、冬は8時開始だった夏の開始時間は7時半と早い。一校時から教授のある日は、朝食もそこそこにして出かけます。ところが昼休みが2時間(夏は2時間半)あるので、専家楼に戻りゆっくりと食事をすることができます。そして、中国ではこの昼休みが昼寝タイムとなっているのであります。午後は夏冬にかかわらず2時に始まります。

━━━土肥先生はどのクラスの何の科目をご担当したか教えてください。
土肥先生:中国では学生の学年を、一般的には入学年度で呼び表しています。私の赴任したときは、研究生(日本の大学院生に当たる)が欠員となっていて、79期生(4年生)から82期生(1年生)の学生が在籍していました。私は前任者の担当した講座を引き継ぐことになっていたが、池上貞子氏の突然の入院により、急遽講座の担当が組み替えられました。そして、79期から81期の学生を受け持つことになりました。その中には全く予想もしていなかった「会話」と「ヒアリング」も含まれていました。

━━━実際授業を始めてから、日本との違いがありましたでしょうか?
土肥先生:南開大学で授業を開始してからまもなく、中国人の女性の先生が授業をみに来ました。それは80期生の「精読」(日本の英語教育のReaderに当たる)で教材は小説(近代文学)でありました。その教材を始める最初の時間であったので、全体を一読して読みを確認した後、内容や構成の概略を整理してその時間は終了しました。それから数日後、その先生と会話を交わす機会があったのだが、曰く「内容理解点では効果的な授業展開ですが、言葉の用い方からもいろいろ説明してほしいのです。例えば『道草を食う』という表現がでてきたら、類似表現に『油をうる』があるということや、慣用的には『道草を食べる』とは言わないということなどについて解説が学生達に必要なのです・・・・・・」と。私が学生たちに聞いたところ私のような授業展開は中国の先生はやらないということでした。

━━━外国人に日本語を教授する際に気付いたことはありましたか
土肥先生:そうですね、当然のことながら、中国人にとって日本語は外国語であります。予想されていたことではありますが、現実的な言葉の機能や意味用法の違いに重点を置く必要があります。この点に関しての心構えはもっていたつもりでありましたが、そしてこのような語彙分析だけが主要なことであるとは思われないが、外国人に日本語を教授する場合の問題点を示唆しているといえるでしょう。

懐かしい思い出


━━━楽しい思い出がありましたら教えてください。
土肥先生:南開大学滞在中は外事処の方々には一方ならぬお世話になりました。学部の先生たちとの交流や旅行団の一員として中国各地へ回ったこと、「中秋節」の夜に「水上公園」で80期生たちと遊んだ、冬の夜主任の家に招かれて、「羊のやぶやぶ」をご馳走になった、「青年八百屋」に出かけて野菜をよく買った、日本人留学生が専家楼に訪れてきては夕食をともにした・・・・・・。
帰国してすでに30年余り、当時の学生たちの中には東京近辺に住んでいる人もいます。その人達とは「我的学生」「我的老師」として交流があります。

中国での貴重な体験話を聞かせてくださいありがとうございました。2年という時間は決して短い期間ではありません、きっとこの間思いもよらぬハプニングや日本語を教える草分けのような部分があったと思いますので、多くの人々に勉強になったと思います。本当にありがとうございました。

■ライタープロフィール
名前:姜春姫(きょう・しゅんき)女性
中国天津市南開大学卒業。早稲田大学を経て東京学芸大学教育学部修士課程修了。大学卒業後、中日の通訳翻訳や語学講師を務めた後1990年に来日。グローバル「医・職・住」ラボでは、グローバルな視点で、日本と中国との高齢者が直面する医・職・住の問題を提起し、特に日本に住んでいる外国人の問題を提起する。

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