2019年5月30日に公布が決定した「特定活動」。この新制度により、外国人留学生の就職先が拡大し、より多彩な業務領域へチャレンジすることが可能になりました。今回は、特定活動として外国人を雇う場合、企業側にどのようなメリットがあるのかを解説します。
外国人の在留資格の種類
外国人が日本での就労を希望する場合、大きく分けて4つの在留資格の中から、自分に適したビザを取得します。各在留資格の特徴を簡単に解説します。
4つの在留資格
① 技能実習(1号・2号・3号)
② 特定技能(1号・2号)
③ 技術・人文知識・国際業務
④ 特定活動(新制度)
① 技術実習(1号・2号・3号)
目的:国際貢献・技術移転
期間:最長5年
更新:不可
学歴:不問
仕事内容:対象職種のみ(80種類144作業)
仕事例:農業、建設業、製造業、介護、清掃など
転職:不可
技術実習(1号・2号・3号)の外国人を雇う場合、最長で5年しか勤務させることはできません。さらに、その後外国人は帰国しなくてはならないという制約があります。日本語レベルも日常会話程度で特別日本語試験はありません。また、就労先は対象職種に限られます。そのため、企業側はある一定の職種のみ、5年間だけ対象の外国人を雇うことができますが、企業の戦力として長く勤務してもらうことはできません。
② 特定技能(1号・2号)
目的:就労
期間:最長5年(1号)、制限なし(2号)
更新:不可(1号)、可能(2号)
学歴:不問
仕事内容:14業種のみ(1号)
仕事例:建設業、造船業、宿泊業、外食業など
転職:可能
特定技能の場合、1号か2号かにより内容が異なる部分があります。特徴的なのは、2号だと在留資格の更新が可能なことです。14業種という制限があります。特定技能は、単純労働としての労働力確保を目的としています。そのため様々な職種にチャレンジするとか、経験を積むというよりも、特定の職種においてのスキルを重ねることになります。日本語レベルは日常会話程度であり、2号のみ試験結果の提出が必要です。企業側は、対象業種であれば雇うことができ、5年以内もしくは5年以上の単純労働力を確保することができるでしょう。
③ 技術・人文知識・国際業務
目的:就労
期間:制限なし
更新:可能
学歴:国内外の大学卒業、日本の短大・専門学校卒業
仕事内容:外国人としての特色を発揮でき、語学や技術を活かせる仕事
仕事例:語学教師、海外営業、エンジニア、デザイナー、マーケティングなど
転職:可能
技術・人文知識・国際業務の場合は、専門・短大・大学卒業でなくてはならないため、学力や知識がある人材が集まります。日本語もビジネスレベルであるため、コミュニケーションもとりやすいでしょう。希望すれば在留期間の更新が可能なため、企業側も戦力として外国人を育成することができます。ただ、外国人ならではの感性を活かす職という制約があるため、外国人側が本来希望する職種であったり、挑戦してみたい職種へスムーズに就職できるかというと難しい点もあります。
④ 特定活動(新制度)
目的:就労
期間:制限なし
更新:可能
学歴:日本の大学・大学院卒業
仕事内容:大学で学んだ知識を活かすことができる仕事(接客販売など、外国語を使わない仕事でも可能)
転職:可能
特定活動では、業種・職種の制限はありません。製造業等の現場勤務をはじめ、飲食店、スーパー、コンビニエンスストアなどのサービス業においても、現場での就職が可能になりました。留学生時代にアルバイトをしていて、そのまま就職ということも可能です。日本語レベルも、日本の大学や大学院を卒業しているレベルであり、日本語試験の結果を証明することが必須であるため、ビジネスレベル程度の日本語力があるのは確かです。コミュニケーションも円滑にとることができるでしょう。また、在留資格は希望する限り更新できます。これまで制約としてあった14業種や、外国人としての特色を活かせる仕事という縛りがなくなったため、企業側も外国人側も、様々な職種での長期間の勤務が可能になり、外国人が働くことができる幅がぐっと広まりました。
企業が「特定活動」として外国人を雇うメリット
企業側が、特定活動の在留資格を持つ外国人を採用し雇うメリットは、大きく3つあります。
① 日本の文化に慣れている
特定活動として在留資格を得るためには、「日本の大学を卒業、または日本の大学院を修了」という条件があります。少なくとも、4年以上日本の学校に在留しており、日本で生活しているのは確かです。さらに、多くの外国人は日本の大学入学前に、日本語学校へ約2年通ってから大学に進学しています。そのため、特定活動の資格を有しようとする外国人の多くは最低でも日本語に6年ほど触れていることになります。そのため、日本語をはじめ、日本の生活に慣れておおり、日本ならではの文化にも理解があると言えるでしょう。加えて、日本で生活する中で大半の外国人はアルバイトをしているため、職場におけるマナーも理解していることが想定されます。特定活動の就労資格を得た外国人を採用することは、教育がしやすくコミュニケーション面でも接しやすい・理解を得やすいというメリットがあると言えるでしょう。
② 日本における採用活動と直接雇用が可能
企業が外国人を特定活動として採用する場合、他の日本人同様の採用・雇用体制で問題ありません。他の在留資格では、採用時や採用後、必要な手順をふみ、指定の期間に給与などの報告を毎月行うという労務コストがかかります。しかし、特定活動の場合は、日本の求人媒体や派遣業者を利用し、直接雇用が可能なため、特別な準備やその他報告の必要はありません。外国人採用の経験がない企業であっても、採用から雇用を行い、永続的に勤務してもらうことが容易になりました。
③ 戦力となる労働力を保持できる
特定活動では、企業側が雇用し続ける限り、在留資格を更新することができます。技能実習や特別技能(1号)の場合、在留期間は最長5年間。その後、対象の外国人は自国へ帰国してしまいます。ただ、特定技能として雇うことにより、対象の外国人を会社の戦力となるよう育成し、人材として確保できます。ゆくゆくは幹部や後継者として育成、ということも可能になったため、企業側も外国人側も将来を見据えた上での選択肢が広がったと言えます。
まとめ
新しく生まれた、特定活動の在留資格。外国人側は就職口が広がり、日本で就労し自分らしく働くことへの可能性が一気に広がりました。また、企業側は、即戦力や一時的な労働力としての確保ではなく、会社の未来を担う人材として、外国人を雇うことが可能になりました。特定活動の外国人を雇う企業が増え、日本で働く外国人の活躍の場が、今後増えていくことでしょう。